「彼らに面と向かって間違っていると言い切れるか」ビハインド・ザ・カーブ 地球平面説 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5彼らに面と向かって間違っていると言い切れるか

2021年1月10日
iPhoneアプリから投稿

flat earth説信奉者を単なる「狂人」とみることなく可能な限りフェアに彼らの活動を描いている。彼らの言動は一見するとコメディのようでいて、決して心底から笑えない。

近代啓蒙主義の下、私たちは自然科学の発展の恩恵を受け、その科学思想を「無条件」に受け入れてきた。ニュートン力学や相対性理論など、たとえその中身を全く理解できなくとも疑うことなく、むしろ疑いの姿勢を持つことを周りに悟られることを恐れるかのうように振る舞っている。「あいつはバカだ」と後ろ指をさされないように。

しかし、ここにきて人類の歴史は常に進歩していくという思想は現代社会では完全に崩壊し、インターネット社会に閉じこもった人々は「見たいものだけを見」、「自分の目で見えるものだけしか信用しない」ようになってきている。

ダボス会議に出席するような、崇高な理念を謳いつつ自らの手は汚さない、一部のエリートや特権階級を敵視する「反知性主義」の広がりも根っこは同じ話だ。
「知性」に対する反発に巧みにつけ入ったのがトランプであり、彼が大統領の座を退陣しても「トランプ現象」が終わることはない。
彼らは自分が信じるコミュニティのSNSしか見ないので、「選挙に不正があった」と言われれば、それは彼らにとって揺るがない「真実」になる。

決して他人ごと話ではなく、私たちも「あちら側」にいつでもいく可能性はある。
私たちは無意識のバイアスから完全に逃れることは不可能だと自覚しなくてはならない。

atsushi