劇場公開日 2020年8月14日

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「愛しくて 切なくて 僕は苦しい…」僕の好きな女の子 わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5愛しくて 切なくて 僕は苦しい…

2020年8月19日
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又吉直樹さんが原作の映画で、今年『劇場』が公開されました。あの主人公もあまりの痛々しさに震えましたが、今作の主人公も負けず劣らず… 胸のあたりがずっとゾワゾワしてくるムズ痒さと苦しさ。きっとこんな感情になるということは、あまりの"逃げ癖"というか現実と向き合わない登場人物への切なさと、自分への心当たりがあるからだと思います。リアルです!傑作です!!

主人公の渡辺大和さん、「勝手にふるえてろ」よりもかなり良いですね。なんですか…あの良い様に言えば飄々としている、悪い様に言えば地に足ついてない感じ…口角の使い方にもどことなく冴えなさが伝わってくる感じ…苦しい…

そして相手役の奈緒さん。すっごいかわいい!!あんなん絶対男なら惚れるでしょ!!劇中でも言われていたけど、ヤリマンとかビッチとかって言うわけでもない、小悪魔と言うわけでもない…いるんでしょう。無自覚に童貞を殺していく女。

一言「好き」だと伝えられたら上手く行くんじゃないかと外から見てたら思うんだけど、その一言が言えないほろ苦さ。今の関係が壊れてしまうことが怖い…分かるなあ。彼女の言うことには無条件の肯定。渡したい缶ジュースも差し入れもポツンと家に残る。切ないなあ。

終盤の公園のシーン。あそこで「会う」と決めた主人公は、この関係を払拭したかったのか…それとも自分の仕事に繋げたかったのか…時間軸も相まって考えさせられました。そしてボートに乗るところから、主人公を映すシーンでカメラが急に横揺れしだすのが巧みだなと思いました。それまでは、遠くから定点カメラのような撮り方が多かったのに、そのシーンは俯瞰して見る(逃げる)視点から、主人公自身の心が揺さぶられてしまっていると感じさせざるを得ない演出でした。まあ、このあたりからは『この作品が好き』という3Dメガネをかけていたので、冷静に見れてなかったかもしれませんが(見た人なら分かる)。

最初のタイトルの出し方なんてもう完璧だったと思うのですが、ラストカットも僕は良かったと思います。主人公はあれからちゃんと成長した。でも、「いい人」と呼ばれたあの頃が恋しくもなる。これをセリフなしで説明するには十分だと思います。だって、昔好きだった人の連絡先なんて年月が経つともう知らない場合もあるじゃないですか。それでもたまにSNSでその人の事を検索したくなるみたいな。そんなこそばゆい感じ。良い余韻じゃないですか。

結局奈緒演じる女の子は主人公に恋していたのか問題も、見る人によって捉え方が違って良い空白を残していると思います。自販機のシーンも写真展の差し入れのシーンも、恋心は分かってるじゃないですか。間の取り方や視野的に。写真展をするくらい写真が好きっていうことは、実像より虚像を愛してしまうことを示唆しているのかなと思ったりもしました。写真の彼には「好き」と伝えられていたんですが…

気になった点は、ジャルジャルが出てくるシーンにどういう意味があったんだろうっていうところ。友情出演の枠を出てない使い方だったらもったいない。自分の読解力のなさなら申し訳ない(笑)

あと、コロナの影響や他作品との兼ね合いもあるとは思うけど、真夏の公開は1番ないんじゃないですか。寒い頃に見たくなる画作りでした。

とにもかくにも、「勝手にふるえてろ」や「愛がなんだ」にも匹敵する、リアルで苦しくなる恋愛映画と出会えたことを嬉しく思います。必ず見直したい一本です。

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わたろー