劇場公開日 2019年11月1日

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「アウトローにしか裁けないもの」閉鎖病棟 それぞれの朝 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アウトローにしか裁けないもの

2019年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

死刑執行しても死なない男の話と聞いて、大島渚監督の『絞死刑』思い出した。だが、精神の病を抱えた人々が入院する閉鎖病棟の物語を作るにあたって、平山秀幸監督が意識したのはクリント・イーストウッド監督の『グラン・トリノ』だったそうだ。どうして、これが『グラントリノ』なのだろうと最初は不思議だった。
でも、笑福亭鶴瓶演じる主人公が、法的には死んでいる人間であることを思い出して納得がいった。法的に死んでいるというのは、要するにoutlaw(アウトロー=法の外)ということ。映画でアウトローと言えば確かにイーストウッドである。そして、この世界には法では裁けないものがある。それを裁けるのはアウトローだけ。これは死刑執行が失敗して、アウトローになってしまった主人公が、病院で得たかけがえのないつながりを守るため、法で裁けそうにない悪を裁く話なのだ。笑福亭鶴瓶が素晴らしい。いつもの彼のような、彼じゃないような、絶妙の存在感で新しいアウトロー像を見せてくれた。

杉本穂高