劇場公開日 2020年12月11日

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「共助の大切さ」ニューヨーク 親切なロシア料理店 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0共助の大切さ

2021年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

コロナ禍で「自助・共助・公助」という言葉がよく使われた。格差拡大の現代社会では、自助では生きて行けない人がいるが、国が財政難では公助も絞られる。ならば、共助が大切ではないか。しかし、地域コミュニティも空洞化している今、どのような共助がありうるだろうか。
本作は、ニューヨークのロシア料理店に集う人々の共助を描いた作品と言える。夫の暴力から逃れて、2人の子どもを連れてNYの街で行き場を失っている。刑務所から出所したばかりの男をマネージャーに迎えたロシア料理店には、看護師をしながらボランティアでセラピストをしている女性はこのレストランの常連客。それぞれが様々な傷を抱えて生きているが、ふとしたことでこのロシア料理店で出会い、互いに助け合って生きていく。人は一人では生きていけない、助け合わないといけないという当たり前のことを描いた作品だが、役者の確かな芝居とデンマーク出身の監督らしい、リアリズムの演出で深く染み入る。今は失われた共助の大切を切々と伝えてくれる素晴らしい作品。

杉本穂高