劇場公開日 2019年3月9日

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「贅を極めた功夫版『ラ・ラ・ランド』」イップ・マン外伝 マスターZ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0贅を極めた功夫版『ラ・ラ・ランド』

2019年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

詠春拳の正統を巡ってイップ・マンに敗れたチョン・ティンチは道場をたたんで雑貨屋を営んでいた。息子フォンとの慎ましやかな生活もつかの間、裏社会を仕切る長楽グループのボンボン、キットに追われていたナナとジュリアを助けたことからキットに逆恨みされ雑貨屋を焼き払われてしまう・・・からの漢汁が丼から滴り落ちる功夫アクション。

『イップ・マン 継承』の続きですが、イップ・マンは回想シーンでチラッと出るだけのスピンオフ。シリーズの名前を冠してはいますが、『~外伝』とはすなわち『~じゃないよ』の意味。巨匠中の巨匠、『酔拳』のユエン・ウーピンが満を辞して監督として登板。ある意味説教臭いとも言えるシリーズからキャラだけ借りて好き勝手やらせて頂きました的な爽快感が冒頭から全開で、タイが誇るムエタイアクションの巨星トニー・ジャーをいきなり投入。ムエタイ対詠春拳という前菜でサーロインステーキを出すかのような贅沢なツカミで鼻腔がスーッとします。

正直ストーリー的にはもうどうでもいいやつですが、もうとにかく見せ場、見せ場、見せ場。ウーピン師父の趣味が炸裂したバラエティに富んだ格闘シーンはどれもハイテンション。しかもこれは意外にも程があるんですが、本作は濃厚に『ラ・ラ・ランド』の影響下にあり。ネオン街の看板の鮮やかな色彩の中で繰り広げられる死闘はもはや武闘会じゃなくて舞踏会。それがどんどん色褪せていく様はデイミアン・チャゼルもその手があったか!と片腹痛くなるレベル。『クレイジー・リッチ!』では餃子を作って麻雀を打つだけだったミシェル・ヨーが暴れまくり、わざわざハリウッドから駆けつけたデイヴ・バウティスタが意外にも深みのある渋い演技を披露したりして、これで1800円は安いやろ!?と泣きながら呟きました。

よね