劇場公開日 2019年1月19日

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「大人っぽい意匠」飛べない鳥と優しいキツネ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大人っぽい意匠

2020年7月11日
PCから投稿

原作はWeb漫画とのことで、おそらくターゲットも若い世代だと思われる。共感がじわじわと拡がって映画につながったのだろう──と思った。

素朴な子を起用していて、効果的なファンタジーが挿入される。
善悪を単純化しない。
幸不幸の都合調整がなく、安易な救いに走らない。
シビアだが、さわやかな後味がある。
さながらEigth Gradeのようだった。

俳優は一般庶民を演じてもショービスな背景が見えるものだが、この主人公には、無垢を感じた。たんなる主観、あるいは新鮮だから──なのかもしれないが、素の感じが、ほかにいないほど顕著に出ている。

転じてこんな子を、探して、見分ける慧眼やマネジメントに底力を感じた。なんていうか、一事が万事である。近年の韓国映画の好調と、新人の発掘、俳優の多様性はつながっていない──はずがない。

また追尾の撮影がうまい。
少女が歩いている。
ただそれだけを爽快に撮っている。随時そのフォロー/トラッキングショットがあらわれ、過酷な現実や悲哀が、相殺される。
ファンタジーの挿入と洗練された撮影によって、悲劇を悲劇的にしない軽妙があった。

主人公は少女だが、映画にはそこはかとない大人度がある。
すなわち作品の共感は同世代に拡がったものだが、映画の意匠はEigth Gradeのような広汎な見応えを持っている。

日本にもよくある、ありがちな映画のそとづらと内容を持っていながら、ペーソスはありがちな映画にはない。
いじめを主題にして、この滋味へ持っていくことが、きょうびの日本映画にできるとは思えない。

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津次郎