劇場公開日 2018年11月3日

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「ほのぼの」パグ・アクチュアリー ダメな私のワンダフル・ライフ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ほのぼの

2021年6月17日
PCから投稿

とりわけ、日本での評価が高い海外映画がある。
その理由が(なんとなく)わかる気がする。

個人的な見解だが、その理由は萌えによるところが大きい。と思う。
かわいいの押し出しがあると日本でウケる。

かわいいを小動物に依存したばあいも、日本ならいける。
日本に、ペットとの日常を綴ったドラマ・映画が多いのは、その需要があるから──だと思う。

おそらく外国には萌えに依存してしまう文化圏がなく、かわいい小動物で釣る作風──みたいなものがない。
動物の映画だとしても、人間との有機的な繋がりがある。
Hachiも、Megan Leaveyも、ボブという名の猫も、そしてこの映画もそうだ。

動物を据えた映画の狙いや着地がなんであれ、日本人は動物の「かわいい」によって納得し、ほのぼのした気分になり、癒やされてくれる、いわば「楽勝なカスタマー」または「攻略しやすいマーケット」と言える──。

・・・かどうかは、わからないが、日本人が「癒やし」や「ほのぼのした空気感」が好きなのは事実だと思う。
萌える、ギラつきのない、優しく、甘い世界観をもっているもの。
たんじゅんに、登場人物や絵面がかわいいことで、多くの日本人は溜飲することができる──と個人的には見ている。

と結論すると、矛盾に遭遇する。

日本の映画監督がつくる映画。
巨匠・新鋭・気鋭・鬼才・天才と呼ばれる人たちのつくった「ザ日本映画」には萌えやほのぼのがない。
日本映画は古参も新鋭も、まるで鋳型から抜けたように画一な作風=ロマンポルノ風の悲哀を持ちネタにしている──ように見える。(これは個人所見です。)

ところが日本人は、ザ日本映画とは、逆の、ほのぼのした萌える海外映画が好き。──だから「矛盾」と言ってみた。

ボブという名の猫同様、この映画も、日本での評価が高かった。
主人公を演じるBeattie Edmondsonは顔も体躯も抵抗値がきわめて小さい女優さんで、イギリス訛りが好ましく、展開上の振幅も激しくない。「ほのぼの」で甘く、パグ犬パトリックが「かわいい」。バカっぽいけど愛らしい話。かつハッピーエンド。

日本発の萌えなのに、なぜ海外製のほうが巧いのかと言えば、日本で「萌え」がつくられたばあい、ユルユルになってしまうから。
ようするに作り手が萌えちゃっていたら、しごとにならない──という話。
だから、動物をあつかった映画も、萌えを制御できる外国人がつくった外国製のほうが、圧倒的にいい。

これは「ザ日本映画」全般にあてはめることができる現象だが、日本映画の重鎮にはポルノ出身者が(すごく)多い。
で、よく思うんだが、ポルノを撮るばあい、ちんちん立っててしごとになるだろうか?
欲情を描くなら、(とうぜんだけど)つくってる人の欲情は制御できてなきゃならない。

同様に「かわいい」を撮るなら撮ってるひとが「かわいいなあ」って思っていたら、むり。
日本映画がダメなのは、撮ってるひと(監督)が「おれこの女優とヤレっかもしんねーぞ」とか考えながら撮ってるから。──ではなかろうか。(これは偏見に満ちた妄想です。が、当たりだったら、すいません。)

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津次郎