「Black Satire Comedy」ホワイト・ボイス vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

Black Satire Comedy

2019年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

知的

風刺っていうのはこういうもののことを言うんだ。
黒人社会や資本主義、格差社会などの社会の問題をコメディで描いた本作。ジャンルで言うと、ブラック・サタイア・コメディ。
この作品、いろんな意味で振り切っている。コメディタッチも従来のようなものではなく、ビジュアルでコメディ要素を追加していて、風刺的な内容もそのストーリーの中心に来ているから分かりやすい。昔から、風刺とコメディとセットで表現されてきて、ダイレクトに主題にぶつけることで、その問題に対して詳しく深く入り込むことができるし、作者の意見も入れることができる。

日本人はこういう作品に対して、少し軽蔑した目で見ることが多い。たしかに美しくはないかもしれないが、人間の良い意味でも悪い意味でも人間の臭さというものを描いている海外ならではのタッチは日本にはないものだから、もっともっといろんな人の目に触れられていってほしい。

この作品で長々と話をするといったような作品ではなく「あの映画見た?ぶっ飛んでるよね!」といったように人々の口コミで広まっていくようなものだと思う。
しかし、映画としての美しさはかなり凝って作られていた。プロダクションデザインの統一感、キャラクターの色濃さ、撮影の遊び心はまさに芸術と呼ぶにふさわしいもの。

映画において撮影というのは、一番の力を持ち、多くの情報を与えてくれる映画最大の要素である。それゆえ、1フレーム、1フレームに意味を持たせ、美しいショットを作ろうとする。一方この作品で強く感じたのは、映画は今や大衆芸術であり、とても多くの人が気軽に観ることのできるもので、第一にエンターテインメントであるということ。単純に人間の意識が画面に向くような画作りをするということは、忘れてはいけないものであると思う。
この作品でも、印象的なシーンから、1フレームの1つのプロップにしても、視聴者が少しでも映画の方向に一歩踏み出せるような工夫が多く見られる。良い映画というのはここを忘れない。更にコメディとなると、くだらないところをどれだけ本気でやれるかで、笑いの幅も広くなるし、そこからの風刺のえぐみも強くなるというものだ。

別にこの映画を観て、社会問題に真剣に考えてもらおうなんて監督は思ってないだろう。純粋に映画を楽しんで、キャラクターを知り、その世界を知り、印象に残ることが重要なのである。こういう作品がもっともっと世界中に広がっていったら良いなと切実にながっています。

vary1484