世界で一番ゴッホを描いた男
劇場公開日:2018年10月20日
解説
中国・深セン市近郊の町でフィンセント・ファン・ゴッホの複製画を描き続けている男が「本物のゴッホの絵を見る」という夢を実現するため、アムステルダムを訪れるまでを描いたドキュメンタリー。中国・深セン市近郊にある「大芬(ダーフェン)油画村」。ここでは世界の有名画家の複製画制作が産業として根付いており、世界市場の6割ものレプリカがこの地で制作されていると言われている。出稼ぎでこの町に来たチャオ・シャオヨンは独学で油絵を学び、ゴッホの複製画を20年間も描き続けている。そんなシャオヨンは、いつからか本物のゴッホの絵画を見たいという夢を抱いていた。ゴッホが実際に描いた絵を自身の目で見てゴッホの心に触れ、何か気づきを得たいという思いは日増しに強くなり、その夢を実現するため、シャオヨンはゴッホ美術館があるアムステルダムの地を訪れるのだが……。
2016年製作/84分/G/オランダ・中国合作
原題:中國梵高 China's Van Goghs
配給:アーク・フィルムズ、スターキャット
スタッフ・キャスト
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2022年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
■趙小勇は独学で油絵を学び、20年にわたって深圳の”油画村”でゴッホの複製画を描き続けていた。
だが本物のゴッホの絵画を見たことはなく、想いを募らせた彼は念願だったアムステルダムを訪れる。
そして、自分が描いたゴッホの油絵を見つけるも、その店は観光ショップだった。
しかも、値段は自分が売った値の8倍。
更に彼は、夢にまで見たゴッホ美術館で、「ひまわり」「ゴッホの自画像」を丹念に観て、本物のゴッホの絵画に衝撃を受ける。
そして自分は画家として何を目指すべきなのかを思い悩む。
◆感想
・中国の深圳の”油画村”で、ゴッホの複製画を20年、10万点以上家族と製作してきたという、趙小勇のお金がなくて、中学一年までしか学校に通えなかった生き様に驚く。
・複製画ビジネスの実情と制作過程にも触れている事も、興味深い。流れ作業の様に油絵を製作する様。世界中から注文が入る様子。
・そして、彼が夢にまで見たアムステルダムで経験した事と、行動。
彼は、ゴッホの原画に衝撃を受けつつも、キチンとゴッホが通っていた病院、そして終生ゴッホを支えた弟テオの墓に並んでいるゴッホの墓に足を運ぶ。
彼が、如何にゴッホを愛しているかが良く分かるシーンである。
<そして、帰国した彼は、大きな決断をする。自分のオリジナル作品を描くという決断だ。
最初のモデルになったのは80歳を超える、趙小勇が”一番好きだ”という祖母である。
その絵から伝わるモノが、素人ながら何だか沁みてしまった・・。
今作は、複製画に携わる男が抱く夢、苦悩、葛藤を描いた佳き、ドキュメンタリー作品であると思った。>
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狭い空間で何人もがゴッホの複製画をひたすら描き続ける場面にまずは圧倒されました。そして20年もゴッホを描き続けるチャオさんは、ゴッホの原画が見たいとアムステルダムへ。
画廊ではなく、お土産店で自分の絵が何倍もの価格で売られている現実に呆然としてしまうシーンは胸が痛かったです。
ゴッホはすごい!とゴッホを褒め称えて終わるのでもなく、ゴッホと自分の絵は全然違った!と落ち込んで終わるのではなく、自分は何者なんだ?と葛藤するチャオさん。新しい一歩を踏み出す姿、真っ直ぐさに心打たれました。
2018年11月30日
iPhoneアプリから投稿
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20年もの長きにわたり、中国・深圳でゴッホのレプリカを描き続けてきた主人公。貧しさゆえに中学一年までで学業を断念し、油絵は独学で身に付け、ゴッホを神のごとく崇拝する。
「いつか本物を観たい」との夢を叶え、アムステルダムへ。そこで彼は、自分が描いた絵が画廊ではなく土産物屋で、卸値の8倍で売られているのを目の当たりにし、ショックを受ける。
さらに、本物のゴッホを観て「比べるべくもない」と打ちのめされる。
「夜のカフェテラス」で描かれたアルルのカフェや、ゴッホが入院していた精神病院を訪れ、オーヴェル・シュル・オワーズのゴッホの墓に花を捧げ、「ようやく会えた」と感激し、語りかける。
「おれたちは結局、職人だったんだ」としょげながらも、仲間に励まされ、「自分の絵を描こう、想いを伝えるんだ。50年後、100年後に突然認められるかもしれない」と気勢を上げる。
ゴッホに憧れるひたむきさと健気さに胸を打たれた。
だれか、中国のヴァイオリン職人を取り上げたドキュメンタリーも、作ってくれないものだろうか。
2018年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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20年ゴッホの複製画を描き続けた、中国人画工チャオ・シャオヨン。20年ゴッホを描き続けたのに、実物は見たことはない。「実物を見ればきっと“気づき”が得られる」と、オランダ行(ゴッホ美術館がある)を願っていた。妻の説得、ビザ発行諸々を経て、憧れの地・アムステルダムへ。
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自分の絵が画廊などではなく、“お土産屋さん”で売られていたこと、それでいて売値の10倍弱の価格で売られていたこと(それだけ、チャオの絵が安く買いたたかれているということである)――何より、「オリジナルでは何を描いているのか?」という問いをぶつけられたこと。
技術者(=画工)と芸術家って両立するのか、と苦悩するチャオの姿は仕事する人ならだれでもぶつかったことがあるはず。生きてる間に認められないかもしれないけれど突然、50年後100年後認めらえるかも、とオリジナルを描いてみる第一歩を踏み出したチャオの姿に爽やかな感動を覚えます。
また、個人的には油絵の1つ1つ色を塗り重ねるさまに例えて「結婚した当初は不安だった」と。
「でも、色を重ねるようにここまでやってきた」という趣旨のセリフに胸が熱く(途中“夫唱婦随”と同僚たちに言われるくだりがあるので、いっそう)。