劇場公開日 2019年12月20日

「とりあえず、アフガニスタンについて思う事などを。」ブレッドウィナー bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5とりあえず、アフガニスタンについて思う事などを。

2021年9月20日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

英露の対立から引かれた国境線によりパシュトゥーン族が分断された事が、近代におけるアフガニスタンの不幸と混乱の始まり。その後のゴタゴタや緩衝地帯としての蝙蝠政策の困難に苦しんだ時代のことは、一旦置いとくとして。1979年のソ連の軍事侵攻。米国による反ソ連ゲリラの組織化と強化。の後の放棄と裏切りは、時を経て9・11に繋がり、米国の侵攻の口実となり、今年、是非を顧みない撤退となりました。そして今、中国共産党は、その野望を隠すこともなく、タリバン政権の支持を公言。タリバンはイランに石油の提供を依頼。鹵獲した米軍兵器をイランに陸送したとの事ですから、取引は成立していると思われ。

地政学上の特性。
多民族と宗教・宗派の問題。

問題の本質が、この二つだけであれば、アフガニスタンの不幸はこれほどまでのものじゃ無かったのだろうと。アフガニスタンを舞台にした英露の対立構造は、その後、米ソに変わり、今、中対西側諸国(QUADにより日本も巻き込まれています)となりました。再び平和な時代(と言っても、それはいつの事を指すのか?)が訪れることがあるのだろうかと思ってしまう。

イスラム原理主義。そのローカルな曲解は、タリバン政権下に生活する女性達(無論、男性もじゃあるけれど)を苦しめる。「イスラム教で許されている女性の権利は保証する」とタリバンは西側に向かって発表しましたが、原理主義ですからね。事実上、「こっちのやることに口出しするな」ってことです。

残念ながら、人道的見地で、我々日本人にできることは、ごくごく限られていると思われ。難民キャンプの支援はできるけれど、それ以上の事は危険すぎます。

インドへとインド洋へのアクセスを確保したい誰かさん。戦争ビジネスに利用にしたい誰かさん。

報道によれば、米軍は無血開城どころか、装備を投げ打って撤退したそうじゃないですか。無くなったものは、また買えば良い。って話にとどまらず。おそらく一番高くつくのは、セキュリティに関連するハードとソフトが、破壊されることなく中国やイランに渡ったことです。玄関ドアのカギを失くしたら、家中のカギを取り換える必要があるのと同じ。暗号化技術やセキュリティソフトウエアの大規模なアップデートは不可避。これが一番高くつくし、同盟国も影響を受けるでしょうね。戦争屋バイデン。さすがの商売上手です。呪います。

一本の映画としての感想。

幼くして命を落とした兄を主役とした劇中劇を絡めながら進む、少女の闘いの物語は胸に刺さります。殺爆としたアフガンの風景を適度にリアルに描写する作画の美しさ。タリバン政権下で抑圧される女性達の生活のリアル。ストリーもアニメ作品としてのクオリティも、素晴らしかった。

製作陣の中に、アンジェリーナ・ジョリーの名前発見。こう言う映画への支援は、頑張って下さい。でも、変な人たちに騙されないでね、って事で。

とにかく、全般的な印象として。
良かった。とっても。

bloodtrail
Mさんのコメント
2023年1月2日

私はアフガニスタンについてほとんど知りません。
この映画や中村さんの映画を見て、少しずつ知り始めています。
「ホテルルワンダ」を見た時にも思ったのですが、知らないことは罪だと思いました。
元旦に見たのですが、今年最初の映画がこの映画でよかったです。
見てよかったです。

M