劇場公開日 2018年11月23日

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「ロックンロールやブルースの基本は12小節♪♪」エリック・クラプトン 12小節の人生 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ロックンロールやブルースの基本は12小節♪♪

2019年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 Key in AでADAADDAAEDAEの12小節、中には16小節パターンもあるが、ほとんどがコレだ。軽音楽部でギター、ベース、ドラムが揃うと、まず始めるのがクリームの「Crossroads」。クロスロードのリズムじゃなくても、ブルースコード進行でセッションを開始するのが通例だ。先輩から後輩へと最初に継承するのがこのコード進行・・・ああ懐かしい。エリック・クラプトンやジミ・ヘンドリックスを知らなくても、この曲だけは知ってるというミュージシャンも多いはず。

 クラプトン自らが残そうと思ったドキュメンタリー映画。壮絶な浮き沈みの激しい半生を描いているのだが、ジョージ・ハリソンの妻パティへの横恋慕を中心に恥ずかしげもなく多くの恋愛についても語っている。面白いのはパティ本人もナレーションで参加しているので、70年前後を回顧して楽しんでる雰囲気も味わえる。

 さらにはドラッグ漬けやアルコール中毒になったことも告白し、クリームの成功という過去の栄光にすがって観客と喧嘩したり、コンサートを30分で切り上げたりだとか、赤裸々に語り、相当問題児だったことも映画によってわかった。ジミー・ペイジ、ジェフ・ベックとともに世界三大ギタリストの一人、また“ギターの神様”、“ミスター・スローハンド”とも呼ばれるクラプトン。遠い目で見てしまっていたので、これだけヤク中アル中の時期があったとは気づきませんでした。

 序盤の生い立ちについては後々にも語られる、母親との仲が印象的、衝撃的だった以外はさほど面白くもない。徐々にギターにのめり込んでいって、ヤードバーズ、クリーム、デレク&ザ・ドミノスという最盛期を迎える。映像ではビートルズ、ミック・ジャガー、ジミヘン、アレサ・フランクリンといった大物とのツーショットが嬉しいし、音質も良いのだ。インド悲劇を自分とパティに例えた「Lyla」の完成、ジミヘン、デュアン・オールマンの死の辺りからだろうか、クラプトンの人生は堕ちていく。

 映画では「I Shot The Sheliff」でナンバー1を獲得したことに触れてなかったが、やはり当時も浮き沈みが激しかったのだろうと推測できる。ようやく地獄から這い上がってきたのが、息子コナーが転落死して作られた曲「Tears In Heaven」が売れたときなのだろう。考えてみると苦難を乗り越える度に強くなっていたんだなぁ。

 『ボヘミアン・ラプソディ』の序盤、BIBIの店が映し出された時にかかっていた曲がクリームの「Sunshine of Your Love」。映画って繋がってるんだな~と感じたものですが、この作品の最後には慈善事業で薬物とアルコール依存症者のためのクロスロード・センターを設立し、自分のギターをオークションに出したエピソードが紹介されていた。いま、ブライアン・メイもサンゴ礁を守るため沖縄辺野古の埋め立て工事中止を求める請願署名を呼びかけたり、アナグマ保護のチャリティのために愛用ギターをオークションに出すほど環境保護に積極的だったりする。

 とにかく、“12小節”というタイトルが好きです。ブルースに生きた60年代のクラプトン。90年代以降グラミー賞などの栄光もこのブルースに生きた時代があってこそのもの。波乱万丈の12小節を繰り返してこそ、生まれたものではないでしょうか。ただし、本人参加のドキュメンタリーということもあって、編集は雑。彼の死後にマーティン・スコセッシあたりが撮ると最高傑作になりそうです。

kossy