劇場公開日 2019年5月3日

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「ある意味『her~』のアナザー・エンディング」ドント・ウォーリー よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ある意味『her~』のアナザー・エンディング

2019年1月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 アル中のジョンはある日友人の誘いで繰り出したパーティの帰りに交通事故に遭い全身麻痺になってしまう。自由奔放な生活から誰かの手を借りないと生きていけない生活を余儀なくされたジョンはますます酒浸りになるが、嫌々ながら参加したアル中克服の自助グループのセッションに参加したことがきっかけとなって人生を見つめ直し立て直す決意をする。
 2000年に亡くなった風刺画イラストレーター、ジョン・キャラハンの半生を描いた作品。クレジットにロビン・ウィリアムズへの謝辞があったので何かと思ったら生前に温めていた企画だったとのこと。映像トーンはもう今の流行と言っていい赤茶けてザラついた70'sの再現、そういう実話なのでそれでいいのですがこういう映像の作品がここ数年多いので正直食傷気味。お酒を嗜む人にとっては身につまされる話なのかも知れませんが下戸の視点からだと何から何まで自業自得でどこにも感情移入出来なくて困りましたが、自身のトラウマと向き合うことを決意してからのジョンの生き方にはグッとくるものがありました。
 ジョンを演じているのはホアキン・フェニックス。顔が濃くて個性的なので誰を演じてもホアキン本人に見えてしまうのが残念なのですが、ブヨブヨの体でのたうち回る迫真の演技は凄まじくリアル。ジョンを温かく見守る周囲の人々が示す優しさはとても美しく、特に入院中からジョンを支えるアヌーを演じたルーニー・マーラの途方もない透明感にハートをぶち抜かれました。ホアキン&ルーニーといえば傑作SF『her もうひとつの彼女』を思い出さずにいられず、寄り添い生きる二人の姿は『her〜』のアナザー・エンディングのようにも見えました。
 あと吸血鬼映画かナチス映画でしか観たことのないウド・キアーが出ていたのにビックリ。そこにいるだけで映画の品格を一段上に押し上げる存在感もまた印象的でした。

よね