劇場公開日 2018年5月5日

  • 予告編を見る

「熟成された韓流ノワールが薫る見事な作品」名もなき野良犬の輪舞(ロンド) よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0熟成された韓流ノワールが薫る見事な作品

2018年10月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

刑務所内でのし上がった生粋の狂犬チンピラ、ジェホは入所したてで血の気の多いヒョンスと意気投合する。ジェホは出所後ロシアとのコネクションで薬物密輸を手掛けるコ会長が仕切る組織に戻りヒョンスを迎え入れるが、ジェホを信用していないコ会長、コ会長以下を一網打尽にしようとする警察のチョン主任らが織りなす睨み合いの中で二人の間に芽生えた友情が闇に飲み込まれる。

時制が複雑に前後するドラマ進行で登場人物達の輪郭を浮き彫りにするエモーショナルな演出、冷たく研ぎ澄まされたバイオレンスが鮮烈な印象を残すアクションシークェンス、昭和の刑事ドラマ調な劇伴、緩急自在でスタイリッシュなカメラワーク、ドラマを覆う深い闇を際立たせるかのような繊細なライティング、そして何よりソル・ギョングをはじめとする俳優陣の濃厚な演技。欧州・アジア間で輸出入が繰り返されて熟成されたノワールが鼻腔を容赦なく突き上げる見事な作品。チャラいロマンス要素が一滴も含まれない煮えたぎった男のドラマに冠されたハードボイルド過ぎて卵の黄身がはみ出している邦題も素晴らしいです。

よね