劇場公開日 2018年4月28日

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「【“理想に向かって転がる石には苔が生えない!”1940年代のヨーロッパで、産業革命が産んだ社会構造の歪を正すために2人の若者が貫いた生き方を描いた作品。】」マルクス・エンゲルス NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【“理想に向かって転がる石には苔が生えない!”1940年代のヨーロッパで、産業革命が産んだ社会構造の歪を正すために2人の若者が貫いた生き方を描いた作品。】

2021年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

難しい

幸せ

ー 学生時代に学んだ経済学の知識をフル活用して鑑賞。
  マルクスとエンゲルスだけでなく、今作で重要な役割を果たす、無政府主義の父と言われたプルードン(オリヴィエ・グルメ!が演じている)や、ヴァイトリングなどが果たした役割や、当時のヨーロッパ各国(ドイツ・フランス・イギリス・ベルギー)における、一部のブルジョワジーと多数のプロレタリアートの関係性をサラッと、おさらいしておくと、今作の面白さは倍加すると思います。ー

◆感想
 ・共に、地位的には裕福だったマルクス(彼の場合には、後に妻になるイェニーの家柄)と父が紡績工場を営むエンゲルスが、搾取される側のプロレタリアートの立場になって、共産主義思想を形成していく過程は有名であるが、今作ではそれをエンタメ要素を絡ませて描いている。
 ー マルクスとイェニー、エンゲルスと工場で働いていたメアリーが恋に落ちるシーンなど。ー

 ・「私はあなたのニグロではない」を制作した、社会派のラウル・ベックが書き下ろした脚本が、良い。
 1940年代に二人が運命的に出会ったシーンから、彼らが愛する女性の助力の元、ドイツを追われる中「共産党宣言」を執筆する日々に焦点を絞った事が、奏功したと思われる。

<ラストに流れる、ボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」が印象的な、20世紀に多大な影響を与えた二人の若き経済学者、思想家、哲学者の姿を鮮明に描き出した作品。
 現代の共産主義を標榜する国家の多くが、独裁国家になっている事実。民主主義を標榜しながらも、経済格差が予想以上に広がっている状況を、マルクスとエンゲルスはどのように思っているのであろうか・・。>

NOBU