劇場公開日 2018年9月28日

  • 予告編を見る

「ぼやいてます」クレイジー・リッチ! うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ぼやいてます

2022年2月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画、日本でやるとしたら断然、石原さとみだな。なんて考えていたら、すっかり眠ってしまっていたようで、中盤の、バチェラーパーティーのあたりが飛んでしまっている。もう少し中身のある映画を期待してたんですが、とにかくリッチなのはわかったから、笑えるエピソードを増やしてほしかった。

トレイラーでも見たが、出されたお茶をいただこうとしたら、手を洗う水だった。みたいな、いわゆる、カルチャーギャップものだと思っていたんです。主人公のレイチェルはニューヨークで経済学の教授を務める中国系の2世でニューヨーカー。イケメンの彼氏は実はとんでもない大富豪のお坊ちゃんだった。里帰りにして初めてのアジア旅行。さあ、2人の珍道中やいかに?なんて展開を期待していたんですが。

主演のコンスタンス・ウーのリアクションが面白くない。基本、棒立ちのままで、シットコム「ファン家のアメリカ開拓記」でのコメディエンヌぶりの方がよほど笑える。ルーシー・リューがもう少し若けりゃ、彼女の方が面白かったんだろうな。

プロデューサーが原作者に持ち掛けてきた「主役を白人女性で」っていう、提案もうなずける。ハネつけたらしいけど、もしそうなっていたら、普通のB級コメディにしかならなかったのだろうか。ケイリー・クオコやメリッサ・ブノワ、ブレイク・ライブリーなんか、うまくハマった気がする。

印象に強く残るいいシーンもたくさんある。例えば帰りの飛行機は、別れを決意したレイチェルがエコノミーで(行きは彼氏のおごりでファーストクラス)搭乗中、追いかけてきた彼氏がごった返す機内でプロポーズする、なんていうロマンチックなシーンもある。これは典型的なアメリカ映画のノリで、本当にやったら大ヒンシュク間違いなしだろうが、乗客からは好意的に受け取られる。ちょっと「クロコダイルダンディー」なんて古い映画を思い出したりもした。なので、悪い映画じゃないと思うんだけど、どうしてこの映画がアメリカ本国でヒットしたのかが理解できない。アメリカ人のやることをアジアでやるアジア人でしかないのに。

ギューッと縮めれば、30分に収まるような中身のなさ。一番弱いのは、肝心の二人の絆が結ばれるようなエピソードが無かったことかな。初めから終いまでずっとくっついたまんま。家柄の違いが二人を引き離すはずが、愛はすべてを乗り越える。んー、出演者全員のケミストリーも良くないんだよな。オールアジア系でやる意味あったのかな?だからこそヒットしたのかな?

これは、今の中国とアメリカの国際的緊張感を背景に、やきもきする在米アジア人たちの、ある意味理想の恋愛モデルを描き出した映画で、「成功者のその先」を描いた珍しいコメディ。基本的にアメリカの中では平等に扱われるけど、いざ本国に帰れば彼らのしきたりや家柄やルールに縛られる生活が待っている。それでもリッチに生きたいですか?ってことが言いたいんじゃないの?違うのかな。よくわかんなかったなぁ。

「ブラックパンサー」「リメンバーミー」それぞれルーツを強調した映画が続々と製作され、成功を収めている。「ゲット・アウト」なんて変わり種もルーツをめぐる解釈の違いで、奴隷売買を現代によみがえらせたスリラーだった。国際的に見たら日本人なんて存在しないほどに影が薄いんだね。

ところで、劇中パーティーのバンドが奏でるムーディーなバラードがテレサ・テンの「つぐない」だったのには記憶が混乱した。テレサが有名なのか、それとも曲が有名なのか。意外だったなぁ。

2018.10.10

うそつきカモメ