劇場公開日 2018年6月15日

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「宇宙(周り)を動かす奇跡(ワンダー)の力」ワンダー 君は太陽 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0宇宙(周り)を動かす奇跡(ワンダー)の力

2018年11月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

楽しい

幸せ

オーガスト・プルマン、通称オギー。10歳。
宇宙が好き。『スター・ウォーズ』が好き。
理科が得意で、頭も賢く、明るく、ユーモラス。
両親と姉、愛犬、愛情たっぷり幸せに暮らしている。
何処にでも居る至って普通の男の子。
でも、本人に言わせると、「僕は普通じゃない」。
何故なら…、

遺伝子の疾患で、生まれつき顔にハンデが。
27回の手術を受け、“普通じゃない”顔に。

長らく自宅学習して来た彼が、母親の勧めで、初めて学校に行く。
宇宙飛行士オギー、未知なる宇宙へ…!
そんな彼の“大冒険”と、家族、同級生ら関わり合う人々。

公開時から評判上々、見る前からいい映画だろうと思っていたが、評判違わぬ良作。
心地よいほど見易く、ひねくれ者以外誰にも好かれる、THEフィールグッド・ムービー!

“普通じゃない”子が学校に行く。緊張の初日。
子供は正直だ。それは時には残酷だ。
あからさまに注目、好奇心、見せ物、偏見の対象。それはいじめにも繋がる。
幾ら前向きな性格とは言え、さすがに傷付く。
親の前では「学校、良かった」「楽しかった」と言うものの、本当は…。
自分の醜い顔に涙する。
ベタな言い方だが、人は見た目で決まるもんじゃない。
オギーをいじめた同級生、差別した毒親こそ醜い。
こいつらもいずれ、自分たちがどんなに酷い事を言ったか、してきたか、痛感するだろう。
だって、オギーはこんなにも、愛らしいのだから。

ひと度彼を知ると、あっという間に仲良くなれる。
それほど大きく、広く、楽しい少年。
初めての親友が出来る。
しかしある時耳にしてしまった、親友の本音。あれは見てるこっちも胸が痛くなった。
こんな自分が“普通”を望むのは無理なのか…?
その親友も言ってしまった事を後悔。
学校は言わば、社会の入り口。
色んな人と触れ合って、傷付き傷付け、誤解しすれ違いながらも、友情を見つけ、育んでいく。
いじめ問題や友情、モンスターペアレントをも描いた学園ストーリー、子供たちの成長物語でもある。

オギーは作品の太陽。彼を中心に話が綴られる。
でも、周りの恒星だってそれぞれ魅力的。
オギーの姉、ヴィア。弟の面倒見も良く、優しい、親にとっては“手のかからない出来のいい子”。でも本当は、親がオギーばかり見てて寂しい。私の事も見てほしい…。それでも弟を邪険にする事なく、ある時塞ぎ込むオギーを励ます。
初めての親友、ジャック。毎日オギーと遊ぶ毎日が楽しかったのに、つい言ってしまった酷い言葉…。他の友達とも喧嘩…。激しく後悔・反省しながら、またオギーとの友情を取り戻す。
ヴィアの親友だったミランダ。複雑な家庭環境から、いつしか疎遠に。また仲良しに戻りたいきっかけに悩んでいた時に、大役を譲る。
周りの人物も章仕立てで語られ、オギーとの関わりや自身の悩みなどが作品に奥行きを与える。
そして、両親。
父親は男親ならではの愛情とユーモア。
オギーが太陽ならば、母親は太陽すら抱く天体。オギーの全てを包み込む眼差し、言葉、それらが一つ一つが温かい。
担任教師の格言。校長の心温まる言葉。
彼ら皆の物語。

天才子役ジェイコブ・トレンブレイくんの、『ルーム』に続く代表作!
どうかハリウッドよ、この子を大事に育てていってくれ。
ジュリア・ロバーツがこんなにも優しい母親役が合うとは…!
子役たちも皆、好演。
オギーが『SW』好きなので(確かジェイコブくん本人も『SW』好き)、ちょいちょいの『SW』ネタにニヤリ。あのキャラとあのキャラが特別出演!

そう、オギーは太陽なのだ。
オギーが純粋な光を放ち、周りの人物も光り輝く。
一部で本作は“感動ポルノ”と叩かれている。
それはちと違う。
感動ポルノは、障害で涙を搾り取り食い物にする媒体。
本作は障害で感動を煽ろうとしているんじゃない。
感動の先にあるもの…。
周りを動かす力。
変わる人々。
本作が本当に描こうとしているのは、この事だと思っている。

普通って…?
いや、そもそも、普通の人なんてこの世には一人も居やしない。
皆それぞれ、普通じゃない。
だからこそ、皆と居ると楽しい。皆が大好き。
この世界=宇宙はこんなにも素晴らしく、奇跡=ワンダーに満ち溢れている。

近大