劇場公開日 2018年5月18日

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「『プロジェクト・メカゴジラ』の絶望をもう一度」GODZILLA 決戦機動増殖都市 893天狗 モールス信号練習中さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0『プロジェクト・メカゴジラ』の絶望をもう一度

2018年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

興奮

前作『怪獣惑星』を『魔法少女まどか☆マギカ』の1~3話に例える評論がありますが、それに倣うなら今回は9話までに相当するものではないでしょうか。
人類、ビルサルド、エクシフという別々の価値観を持つ種族が共闘していく中で、その価値観の違いを改めて突き付けられる展開が魅力です。小説『プロジェクト・メカゴジラ』で描かれていた、共存すら不可能ではないかという不安の先が、この作品で描かれます。
怪獣映画としては少々不満の残る映像作品でしたが、前作や小説版と併せて世界観を味わっていくと、かなり満足のできる作品ではないかと思います。

本作はゴジラという怪獣そのものより、それと対峙する人類の間で起こる摩擦や衝突に重点が置かれているため、不満を感じる人も多いようです。
ですが恐らく『怪獣黙示録』から始まるアニメゴジラシリーズの物語は、始めからそれをテーマに選んでいるのではないかと思います。

『シン・ゴジラ』は「現実対虚構」というキャッチコピーの通り、現実の日本にゴジラが現れた場合のシミュレーションという側面があります。
登場人物はほとんどが日本人であることから、全員が「ゴジラを倒す」という目的や方法についてぶれない均一な意見や思考を持って、ゴジラに立ち向かうわけです。

一方で本シリーズでは、多様な価値観や考え方を持つ集団が一様にゴジラに立ち向かう状況に陥ったらどうなるか、というシミュレーションである側面があると思います。
全員で助かる道を探すもの、自分を犠牲にしてでも誰かを助けたいもの、自分が生きられないなら人類の存亡にも意味がないと感じるものなど、様々な価値観が衝突し、『シン・ゴジラ』では見られなかった人類同士の足の引っ張り合い、疑心暗鬼、諦観、絶望が描かれます。ビルサルドやエクシフといった異星人も、サイバーパンクで描かれるようなディストピア感溢れる価値観の体現者として必要だったのでしょう。

今回は地球人類とビルサルドの価値観が衝突するシーンが多く登場します。
徹底して合理性を重んじた結果、彼らはどのような哲学を持つに至ったか。人間の感情や尊厳すらも「非効率的」と見なす社会と共闘するという事が、何を招くのか。
母星を出て20年の地球人には真似できないような人生観を目の当たりにして衝撃を受け、結局は決裂し、誰にとっても最悪の結末を迎えます。

持てる全てを失った彼らが今後どのような生き様を選び、どのように行動するのか、第三作『星を喰う者』が非常に楽しみなエンディングとなりました。

賛否両論の作中のメカゴジラの描写も、「ナノメタル製ならばこういう形態も取り得るし、今後再び視聴者の期待通りの姿を取る可能性も否定できない」と考えられますし、この予想を裏切る新しい姿の衝撃が、「星を喰う者」の姿や正体についての活発な議論を喚起したという点では評価すべきポイントであると私は考えます。

893天狗 モールス信号練習中