劇場公開日 2018年6月23日

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「映画製作に関わる全ての人々への福音」カメラを止めるな! ヒロさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画製作に関わる全ての人々への福音

2019年1月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

脚本家を目指していたことがある。実力が無く諦めたが『カメラを止めるな』を見たら、また書いても日の目を見ることは無いかもしれないけどシナリオを書いてみたくなる映画だった。
楽しいとか辛いとか真剣とか言葉では言い表せないが作品を作っている時の空気みたいなものが作品から伝わってきた。
特にゾンビが人種問題のメタファーであるやり取り、あそこはお気に入りの場面。メタファーや深読み、知識が無ければ映画を語っては行けないという風潮に映画からNOを突きつけてもらって嬉しかった。
自分がやってることを崇高なものにしたい人々に踊らされるなよ、って映画から言われてるような気がした。

この作品は元となる舞台作品があり、その作品を監督が拝見して"インスパイア"を受けてシナリオが作られたそう。その為、原作者への許可が曖昧で盗作騒動へと発展してしまった。
この作品はワークショップを通じて元の脚本をキャストと話し合いなが役者の当て書きに変えて直していったという。監督というか映画を作れる人はそこが凄いと思う。役者、スタッフ、脚本家、プロデューサーと数多の人とコミュケーションを取りながら、しかし自分の作品の肝は外さない、これが映画監督に必要な資質だと思う。
だが、この映画は構成が肝の作品だと感じている。トランプゲームの大富豪のようにどの話をどの順序で切るか、脚本の重要な柱である。例えばこの話の前半と後半を入れ替えたら面白さは半減するのではないか。その最も重要なエッセンスを作ってくれた人々へのリスペクトはあって然るべきと思う。
自分も同じことをされた過去がある。とある自主製作映画の脚本を依頼され、作品を書いた。その話は途中頓挫したが、後々、その監督が撮った映画が構成、テーマ、セリフの端々に自分が書いた要素が残っていた。しかし脚本欄にも原案にも自分名前はクレジットされなかった。
多分監督としては元の作品とは違うし、変えた部分のオリジナリティはコチラにあるという意識なのだと思うが、なんというか自分の子供を勝手に別の家庭で育てられたようなやるせない気持ちになったことを覚えている。
カメラを止めるなの原作を主張している方も特にお金を求めているわけでは無いと思う。ただ、自分たちの名誉を認めて欲しいのだと思うし、そうすべきだと思う。
なぜならこの作品はそういった映画を撮る全ての人たちへの福音なのだから。

ヒロ