劇場公開日 2018年6月22日

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「小中華主義を撃つ~朝鮮史理解の必須映画」天命の城 赤ちゃん番茶さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5小中華主義を撃つ~朝鮮史理解の必須映画

2020年6月7日
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○母国史を冷静に総括する困難さと貴さについて

『天命の城』

テーマ性が秀逸である。地政学的に弱小国家足らざるを得ない朝鮮国家の、極めて現実的な在り方を問う傑作だ。

”しなやかな弱さは、とてつもなく強かである”という逆説を、映画文法で表象し、朝鮮史に通底する《小中華主義》の罠を、ちゃんと批評的に引き受け、朝鮮半島の歴史を冷静に総括している。

他方、東アジアにおける近代化という観点で観ても、本作の後金(清):李氏朝鮮という対比が、大日本帝国:大韓帝国という類比にも演繹可能であり、寓喩足り得ている。

なおいえば、「天命」というタームで、小中華主義の総括を表象している点が、巧みだ。朝鮮社会には朝鮮社会の歴史的文脈を引き寄せた《言葉》でしか表出しえない《情念》がある。

母国の歴史を、ここまで冷静に引き受け、総括し、未来にむけ、建設的に問題提起する営みの困難さと貴さを知らせる作品を、私は、本作の他に知らない。

私が朝鮮史の大学教師なら、必ず教材に使うだろう。

隠れた傑作である。

赤ちゃん番茶