劇場公開日 2018年11月24日

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「瞬間を繋いで生きる人々に寄り添う作品」台北暮色 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5瞬間を繋いで生きる人々に寄り添う作品

2018年12月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

台北の街に住む、男と女と少年とその周りの日常。ひたすらに日常。
停止した瞬間と瞬間を繋ぎ合わせ、過去も現在も未来もひっくるめてみんな生きている。
孤独さも表現されているけど、それよりも暖かく包み込むような優しい目線を感じてとても心地良く少し泣きそうになった。

3人の背景は微かに触れる程度しか語られない。
最初はそれぞれがどんな関係なのか、これからどう関わってくるのか全く予想がつかなかった。
少しずつ少しずつ紐解かれたり絡まったりする人間関係の模様や心の内を考えながら興味深く観ていた。
彼らの生活をそのまんま覗き見しているようなドキドキ感がありつつ、あまりに自然な空気にリラックスもできる。

好きなシーンがたくさんある。というか、好きなシーンと好きなカットしかない。
リーが何度も往復する大きな水たまりの水紋、インコと戯れるシュー、車の側で歯磨きするフォン、フォンとシューの奇妙でエモーショナルなドライブ、リーとシューのどっちつかずな会話、リーとフォンの「瞬間と動」に関する会話、などなど。
全部好き。全員好き。全編好き。

台北の今を切り取り、この瞬間を生きる全ての人達に寄り添う映画だと思った。
電車の中でLINEやメールや電話の着信音がさりげなくあちこちで鳴っているシーンがとても印象的。
この映画でメインに取り上げられず画面にすら出てこないモブの人達にも、それぞれの人の繋がりがあってコミュニケーションを取っているんだなと感じる。
電車内ではマナーモードにしてよ、なんて至極真っ当にツッコミ入れたりしつつ。

大量に走る車の一台一台の中にそれぞれのプライベート空間が広がっていて、それぞれのドラマが繰り広げられていること。
ただ歩いてる人も電車に乗ってる人も誰かと一緒にいる人も独りの人も、誰もが物語を持っていること。
当たり前のことだけど、スクリーンに映し出される数々のカットから身に沁みて感じられた。

自分の中で、映画を観た後のあるあるとして「街の様子がさっきと変わって見える」というものがあるんだけども。
この台北暮色の鑑賞後は街の見え方が強烈に変化していて驚いている。
目に入る全ての光景が劇場的に思えて、自分の視界をスクリーンに見立ててカメラワークのように視線を流してみたりして。
いつもはうるさくて煩わしい渋谷の喧騒がこんなにも面白く感じるようになるなんて。

日常感は強いけれど、いかにも映画的なシーンやキャストを含め全てのカットがお洒落でスタイリッシュなのでどこか非現実的な雰囲気もあるのが見ていて飽きない。
欧米や中東など遠くの国が舞台じゃないのも良いと思う。
台湾という日本からとても近い国、街の雰囲気も人間の見た目も日本と似ているけどきちんとした異国で。

インコが可愛すぎる。

KinA