劇場公開日 2019年11月29日

「原作へのリスペクトと新しい表現が両立した力作」銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱 第三章 ナオさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0原作へのリスペクトと新しい表現が両立した力作

2019年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

20年来の原作ファンです。
原作本伝外伝全巻と、石黒版OVAと、道原版コミックを履修済です。
ノイエはテレビシリーズも映画版も全部観ています。
その上で、まず言いたいのは、この作品をこのスタッフさん、キャストさんで作ってくださって、本当に、心から、ありがとうございますと申し上げたいです。
最高でした!!!

原作や石黒版や、その他メディアミックスをしっかりと読み込んで、リスペクトしつつ、現代的な新たな解釈や、演劇的で個々の人物の個人史に焦点を当てた新しい表現にも、意欲的に挑戦して下さってて、銀英伝の新しい可能性を教えていただきました。
感謝しかありません。ぼろ泣きしました。

特に、繊細で説得力のある心理描写が、本当に素晴らしかったです。
しかも、説明的ではなくて、あえて合わさない視線とか、声のトーンとか、空の色とか、目の下に落ちる陰とか、無音になるシーンとか、そういうので表現されるのが、本当に面白くて心に響きました。

ラインハルトとキルヒアイスの描き方も、凄く愛しくて切なくて最高でした。
特にラインハルトは、冷徹な覇者としての顔と、キルヒアイスとアンネローゼにしか見せない幼い少年の顔のギャップを、見事に表現してくださってて、本当に素晴らしかったです。
彼はまだ21歳で、だからこその強さと脆さがあることを、改めて教えていただきました。

そして個人的には、フレデリカとヤンとジェシカとジャンロベールを本当に大事に表現して下さって、震えるほどに嬉しかったです。
たんなる恋愛関係だけではなくて、それぞれが、一人の人間として自立しつつ、繋がっている感じが、たまらなく愛しかったです……!
アンネローゼも、ヒルダも、ドミニクもそうですが、ノイエ銀英伝は、女性の描き方がとても素敵だと思います。

エベンス大佐に父のことを聞かされたフレデリカの反応と、周囲の描き方が、最高でした。
フレデリカとヤンは、この内戦で、同じものを失ったのかもしれない、だからこそ二人の心の距離が近づいたのかもしれないと、じんわりと、心に染み入ってきました。
ラストシーンのヤンとラインハルトの対比も、本当に素晴らしかったです。
感謝の言葉しかでてきません。

アンスバッハとブラウンシュヴァイク公の描き方も、とても繊細で、貴族社会という構造の中でああいう風にしか生きられなかった主従の哀しさが伝わってきました。

是非ともこのまま、このスタッフさんで最後まで続いてほしいです。
まだ、原作小説本伝のうち、ノイエは1/5が終わったところなのです。長い旅路は始まったばかりなのです。

今後があるという前提で、改善点の提案というか、少し気になったことを、一点だけ述べたいと思います。
惑星の地理関係と、艦隊戦の位置関係が、少しわかりにくいかもしれません。
尺の制限があるのは重々承知しておりますが、もう少し時間をとって、艦隊の動きの全体図や、惑星間の位置関係を描いた方が、銀英伝の魅力である戦術と戦略の面白さが、より伝わるのではないでしょうか。

続編を心よりお待ちしつつ、来週また映画館にいきます。

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ナオ