劇場公開日 2018年7月27日

  • 予告編を見る

「コンキスタドールに始まる侵略の歴史の影響」ウインド・リバー 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0コンキスタドールに始まる侵略の歴史の影響

2021年6月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

想像以上に深い話だった。
舞台はネイティブアメリカンが追いやられた“ウインド・リバー”
ハンターのコリー・ランバートは雪の中に、かつて亡くした娘の親友ナタリーの遺体を見つける。
FBIの新人捜査官ジェーン・バナーに捜査協力を依頼されたコリーは、自身の狩りでの知識を使いながら真相に辿り着いていく。

実話が元のようです。
少女が夜の雪原を逃げ惑うシーンで始まる。
ネイティブアメリカンの悲しい歴史を反映したかのような、“ウインド・リバー”という土地がもたらす悲劇。
この街は何もかも奪っていく。
音も娯楽も何もない。あるのは雪が降り頻る静かな雪原だけ。
運もない。
生きようとするか諦めるか。強いのか弱いのか。
被害者←犯人←コリーたち
シカなどの草食動物←ピューマやコヨーテなどの肉食動物←ハンター
という対比も良かった。
超至近距離の銃撃戦など緊迫感もあり、とにかく簡単に良い悪いで分けられない、複雑な心境の余韻が残る良い映画でした。

主人公コリーのかっこいいこと。
あんなかっこいい主人公久しぶりでした。
自分は裁きを加える立場ではないと言いつつも、自分の過去の苦悩を抱え、(復讐とはちょっと違いますが、)相手に同じ痛みを味わせるのには痺れました。
終始重く苦しく悲しい映画ですが、ジェーンにクロコダイル(いや、それはアリゲーター)のぬいぐるみをお土産に渡すセンスの良さに笑わせられた。
本当、シリアスなシーンの直後に「笑わせないで。」
ケイシーとの再会とかベンのその後とかもう少し描いて欲しい部分もあったけど、蛇足になりそうなのでこれで充分ですかね。

唐揚げ