劇場公開日 2018年2月3日

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「本作の製作を可能にしたカーク・カーコリアンに感謝」THE PROMISE 君への誓い セッションさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5本作の製作を可能にしたカーク・カーコリアンに感謝

2020年6月10日
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ルワンダ虐殺を描いた傑作『ホテル・ルワンダ』のテリー・ジョージ監督による、
20世紀初頭に起きた、オスマン帝国によるアルメニア人虐殺を題材とした作品。

不勉強ながら、本作を通じて初めてこの事件のことを知ったのですが、
勤勉で豊かな生活を送る少数民族の彼らが政府の目の敵にされる様は、
後のナチス政権下ドイツでのユダヤ人迫害を想起せざるを得ませんでした。

立場や人種を越えて他者を助けようとするも信頼してもらえなかったり、
助けた結果自らが苦境に立たされてしまったり、
戦乱の中で引き裂かれていく彼らを通じて、
常識の通じない冷酷な世界が確かに現実にあったことを思い知らされます。

虐殺を逃れた彼らが時を経て再会し、
「生きること自体が虐殺を起こした人々への復讐になる」
という言葉の重みを噛み締めるEDは素晴らしいの一言。

ミカエル、アナ、クリスの三角関係が強調されるあまりクドく感じられる部分もあるのですが、
それでも、主人公たちの過酷な運命を丁寧に描く監督の手腕が光る力作だと感じました。

虐殺から生き延びた家族を持つアルメニア系アメリカ人のカーク・カーコリアンは、
本作の製作費9000万ドルの大半を個人的に捻出したそうですが、
彼は本作の完成を待たずして2015年に亡くなってしまいました。

現代の私たちに、約100年前の出来事を知る機会を与えてくれた彼に感謝しつつ、
二度とこのような過去が繰り返されることのないよう願わずにはいられません。

せき