劇場公開日 2017年11月23日

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「期待値を下回った。期待が大きすぎた」gifted ギフテッド うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5期待値を下回った。期待が大きすぎた

2021年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

それでも、マーク・ウェブは今までさんざんワクワクさせてくれた。
「(500)日のサマー」
「アメイジング・スパイダーマン2」
「Limitless」TVシリーズ

そういえば、なんだかちゃんと完結した作品がないぞ。(笑)

彼の作品の特徴は、

日常をていねいに描き出し、とにかく細部のこだわりがハンパないこと。

そして、大胆で荒唐無稽な設定が成立したら、鮮やかに結末に向かってストーリーが動き出すこと。(この映画では、わずか7歳の少女が数学の天才で、10億人に一人の才能を持つ)

いくら作品世界が拡張しても、一つずつのエピソードはしぼったキャストで展開すること。
だから話に置いてきぼりにならないこと。

例えば、ネタバレにならない範囲で説明すると、片目のネコが少女の相棒として常に画面にいるが、特別目立ったことはしない。

このネコは映画に登場した時にはもう片目だった。子ネコの時、少女がゴミ箱から助け出したことがきっかけで、猫を飼いだしたが、彼女が見つけた時にはもう目がなかったのだ。そのことは、このネコに関わったすべての人に印象付けられる。もちろん映画を見た人にも、忘れられないネコになる。

このネコが、実は重要なストーリーの伏線になる。

何かしら理由をつけて猫を遠ざけようとする人は、分かりやすく利害が対立するように人物を配してある。少女の敵として描かれるのだ。

少女の才能を伸ばすためには、養父であるフランクから遠ざけて、英才教育を受けさせることが絶対であると信じて、彼女のおばあちゃんであるイヴリンは、天才に満足な教育を受けさせないフランクを「養父としてふさわしくない」として、訴訟を起こす。もちろんネコになんか見向きもしない。ちなみにおばあちゃんでもあるということは、フランクの母親でもあるのだが。

ネコにまつわる人間関係で、さりげなく対立軸をあらわしている。さすがの緻密な脚本の完成度。

それでいて、子供が自由に動き回っているようにしか見えないカットだったりは脚本通り撮れたとは思えないし、にぎわっているバーのシーンなんか、本当にどこかに実在する店に見える。
やっつけのアクション映画なんか、とってつけたような盛り場が、いかにもエキストラですと言わんばかりに撮られている。そのクオリティの違いは歴然とある。

クリス・エバンスが今回はマッチョ自慢じゃなくて一切脱がないのもいい。
はっきり言って、始めはミスキャストだと思ったが、彼で良かった。
むしろ、「ファンタスティックフォー」「キャプテンアメリカ」では、役に合わせて、必死に身体をつくったのだろう。

高等教育を受けた、天才の家系の一人なので、もっと細身のナイーブな青年がキャスティングされたほうが理想的だった。亡くなってしまったけどアントン・イェルチンなんかベストだと思う。ジョセフ・ゴードン=レヴィットなんかもいい。

でも、クリスで良かった。

根っからの悪人が出てこないのもいい。
みんな何かしら傷を抱え、信じる道を行き、誠実に生きる人ばかり。
それそれの信条をかざすことで、物語の対立軸が生まれる。

だから、マーク・ウェブの手掛けた作品は面白くなるのだろう。

でも、本当は、「アイ・アム・サム」なんかの、涙腺崩壊ドラマを期待していたのだった。その期待は裏切られた。いい意味で。

泣きはしなかったけど、いいドラマだった。
オクタヴィア・スペンサーの出番が少なくでがっかりだったけど。

マーク・ウェブ。
この監督から、目が離せない。

2017.11.24

うそつきカモメ