「幸福のローガン家」ローガン・ラッキー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
幸福のローガン家
スティーヴン・ソダーバーグが劇場映画を引退したのは知ってたが、信じてはいなかった。何か、宮崎駿と同じ感じがして…。
そしたらやっぱり、ハイ、僅か数年の引退でお帰りなさい。
彼が復帰を決めた本作は…
現金強奪&犯罪のエンターテイメント。
…と言うと、今年女性にキャストを変えて新作が作られた大ヒット・シリーズを期待してしまうが、全然違う!
あちらのようにスマートでスタイリッシュで華麗な計画ではなく、地味でトラブル続出。
メンバーもイケててビシッとスーツを決めたカッコイイ面々ではなく、ポンコツ人間、ダメダメ人間。
アメフト選手として将来を有望されながらも、脚の怪我で挫折。炭鉱夫の仕事をクビになり、別れた妻が親権を持つ愛娘にも会えなくなりそうなジミー。
イラク戦争で片腕を失った帰還兵。地元で小さなバーを経営するクライド。
“ローガン家の呪い”の異名を持つ冴えない人生の兄弟。
兄ジミーは、弟クライドを誘い、兼ねてからの計画を実行しようとする。
それは、米国最大のカーレースの売り上げ金強奪計画…!
まず、メンバー集め。
兄弟の妹。
金庫破りのジョー。
彼の2人のおバカ兄弟。
大丈夫?…というくらい風変わりな面々。
いきなりトラブル発生。
実は現在ジョーは服役中。
えっ? じゃあ、どうやって計画に参加…?
壮大な(?)計画を説明すると…
・ジョーを脱獄させる
・計画決行、売り上げ金を盗む
・成功した後、ジョーをムショに戻す
呆然、唖然…。なんちゅー無謀な計画…。しかも全て、首尾よく上手くいくという考えの上で。
またまたトラブル発生。ある事情で、計画を1週間早く決行させなくてはならない事に。
計画を練り直す暇なんてない。
行き当たりばったり、計画実行!
ジョーの脱獄作戦。上手くいった!
一番の大博打、カーレースの売り上げ金強奪計画。小さなトラブルはあったものの、これも何と成功!
そして、ジョーをムショの中に戻す事も成功!
“ローガン家の呪い”なんて異名は単なるデマ? 信じられないくらい、全てが大成功!
…が! 思わぬ事が起きる。
ジミーが、盗んだ大金を返してしまったのだ…!
実はこれもジミーの計画の内。
大金を手に入れてウハウハ!…じゃなく、欲張らない。引き際を決める。
人生やり直せるくらいのお金を戴く。
例えば、ジョーは出所したら、かつて盗んで埋めておいたお金を掘り出そうとしていたが、盗まれてしまった。その盗まれた分。
この計画に多少たりとも協力して貰ったり、迷惑をかけてしまった人々が何人か。皆に微々だが、お裾分け。(序盤の「?」のエピソードがこれらに繋がる)
珍計画と思いきや、実はかなり練られた巧妙な計画。
FBI捜査官に目星を付けられながらも、逮捕に至るまでの決定打に欠けたほど。
身体的に欠陥があり、ついてない。
そんなハンデやジンクスなんか関係ねぇ!
人は噂や見た目通りじゃない。
謎の女性脚本家によるどんでん返しとユーモラスなストーリー。
それをリラックスして、上々の娯楽作に仕上げたソダーバーグの演出。所々ユルいが、彼のセンスや“らしさ”も散りばめられている。
すっかりソダーバーグ常連となったチャニング・テイタムの田舎男ぶり。
何処か不思議クンなアダム・ドライヴァーの巧演。
キャストではやはり、ダニエル・クレイグが異彩を放つ。名スパイより楽しそうに演じていた。
あのドリーム犯罪チーム映画がご褒美級の贅沢品なら、こちらは身の丈に合った庶民品。
集ったラストシーンのバーの雰囲気がまさにそれ。
犯罪っちゃあ犯罪だけど、何だかコミカルとほのぼのと人柄を感じさせる強奪計画であった。