劇場公開日 2017年10月27日

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「切ればジャンルの血が出る監督」ゲット・アウト ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5切ればジャンルの血が出る監督

2020年5月24日
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公開当時に劇場で、最近またCSで観直しました。
当時はすごくよくできてるのに感動して、初監督でこれはすごい!と株が爆上がりしたことを覚えています。
アカデミーの脚本賞も朗報だと思いました。
ただ、映画好きの家人からすると、初見でも序盤の展開や、やり取りから、ほぼこの後起きることが正確に予測されており、あくまでジャンルものの正統に則った、枠からはみ出ない構成なんだとつくづくわかりました。

画面のルックや演出などはともかく、筋書きとしては極めてオーソドックスな、みんなが安心して手のひらに収められる1本ということです。
私は気取ってなくてそこがいい! と思ったわけですが、マニアックな映画好きには物足りないとしても、それは仕方ないのかなとも思います。
作り手が観客の心をきっちりコントロールして、振ったものはきちんと全部きれいに回収して劇場を出ていただくという「おもてなし」というのは私には最高の職人技に見えるのですが、贅沢を言えばもうひと捻りあっても良かったのかなと。

でも同時期に観た「デトロイト」のずっと眉間シワが入ってる感じに比べると、ユーモアや余裕、アフリカ系アメリカ人として生きていることのリアリティを感じて、こちらの方が素直に好きだと言い切れます。
「オバマに3期目があったら」に集約されるイヤーな感じや、連綿とつづく黒人への幻想と憧れなど、散りばめられた悪意の自然さもさすが元コメディアンの監督ならではだなあと思いました。
まあこれは日本に暮らす私が他人事の目で見ているからかも知れません。

「ドント・ブリーズ」も近年のよくできたおもてなし作品でしたが、あれに比べると脚本のツイストがなく、ストレートに結末へたどり着いた印象はあります。
とはいえ低予算で贅肉の一切ない104分というタイトな作りは全面的に支持します。
ノーラン(の弟)にも爪の垢を飲ましたい。。

目を尖らせて真顔にならなくても、娯楽として気楽に楽しんでってよ、という作り手のメッセージを受け取りました。ついていきます。
ついてった結果の「アス」はちょっとイマイチだったけどまた次作を楽しみにしてます。

ipxqi