劇場公開日 2018年4月20日

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「粗があっても勢いよし」いぬやしき サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0粗があっても勢いよし

2018年6月17日
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鑑賞方法:映画館

興奮

昨今流行りの漫画原作の映画。漫画原作は観もしない人から心無い言葉をかけられたり、観た人からもやっぱり猛批判を受けたりするが、最近は良作も多い。特に奥作品このいぬやしきだけではなく、GANTZも実写化の相性が良い。つまり、面白かった。所々で粗が目立ったものの、それを吹き飛ばすような展開、テンションの高さを見せつけてくれたのでエンドロールが終わった後はかなりの満足度だった。

まず、なんといってもCGの良さが挙げられるだろう。邦画のCGはかわいそうなことにハリウッドと比べられることが多く、しょぼいしょぼいと言われている。しかしこの映画では心配はご無用。黒光りするいかにもなウェポンや、爽快な空中戦が観るものを楽しませてくれる。
脚本は、まあ、所要所で突っ込みどころが目立つものの全体的には良くまとまっている要。それも悪く言えば単純、陳腐ということになるのだけど…。それでも途中で飽きることはないと思う。俺は飽きなかった。

で、最終的に悪役であるヒロも一応は救われて、めでたしめでたしで終わる。同じく佐藤健が悪っぽい役を演じていた亜人ではアクション、音楽、演出すべてが爽快感に振ってあったが、いぬやしきではしっとりと終わる。中々いいんじゃないかと思って、その足で原作を読んだのだけど…。
これ、原作の方がよっぽどリアリティもドラマ性も高い。よくある「大切な人以外の命はどうでもよい」という陳腐な死生観が、原作では説得力を以て確かに息づいている。一方で、映画では自分の境遇に絶望した哀れな高校生でしかなかった。犬屋敷一家も直行も、映画では全体的に薄っぺらい。全員『何かの作品で見たような』人間に成り下がっている。
多分、漫画を映画に翻訳した際に、観客がすっと飲み込めるようにキャラ設定を作り変えたのだろう。思えば「アイアムアヒーロー」や「るろうに剣心」でもドラマパートを犠牲にして特色を一本に絞っていた。アイアムアヒーローではゾンビ大戦、るろ剣ではチャンバラ活劇。そしていぬやしきでは息をのむ空中戦。
ドラマ部分を台無しにしたのは少し残念だが、それでも面白いことに変わりはない。むしろ、原作と映画とで違った面白さを持ついぬやしきを打ち出してくれたことに感謝しかない。非常に素晴らしい。

サブレ