劇場公開日 2017年6月24日

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「信条をつらぬく」ハクソー・リッジ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0信条をつらぬく

2021年3月9日
PCから投稿

メルギブソンはタカ派でピューリタンなひとだと思う。
とはいえ、タカ派もピューリタンも、わたしはその意味をよくわかっていないw。
タカ派は国粋主義的で白人至上なトランプ大統領みたいなかんじを言っている。
ピューリタンは宗教的意味合いよりホモフォビアな側面を言っている。ヒースレジャーにホモ映画(ブロークバックマウンテン)に出るのはやめろと諭した逸話は、けっこう知られていると思う。

国策映画などという言葉があるが、自国のことを善良かつ正義に描く映画は、ぜったいに正しいと、わたしは個人的に思っている。どこに自国を悪く描く国があるだろう?そんな国は日本だけだ。徹底した自虐がわたしたちに何を及ぼしただろう?

わたしはもちろん戦争を知らない世代だが、戦争をヒロイックに描いた映画が日本にもあっていいと思っている。坂井三郎を劇的で完全なエンターテインメントとして描いた、たんじゅんな映画を見たいと思っている。

エンターテインメントに必要なのは、たんじゅんさだと思う。誰が良いのか。誰が悪いのか。もちろん悪にも両義性をふくませないと、抗日映画みたいな形骸になってしまうが、勧善懲悪のたんじゅんさはエンタメのきほんだと思う。

そのうえで、太平洋戦争で戦った我らの先達をスクリーンで縦横に暴れさせて欲しかった。むろん永遠に無理だ。事実上、戦争に負けたことは、創作に恒久的な規制がかけられたも同じである。戦争に負けると英霊は戦犯に変換される。たんじゅんなヒーローをつくったら、内外の反日から叩かれて、仕事や活動の場を追われてしまうにちがいない。

ただし公人でなければヒーロー視していいし靖国神社へ参拝してもいい。わたしは政治を知らないし右も左もきらいだが、基本的に日本がわるい国だと思っているならば、とっととよそへ移ったほうがいい。
けっきょく、作り手がたんじゅんで明解な善悪の判断基準をもっていなければ、戦争エンタメなんかつくれない。タカ派でピューリタンみたいな人でなければ、いい戦争映画なんかつくれないのである。

ただアメリカとて、一枚岩じゃない。アメリカを良く描きすぎるとリベラルから反撥の声があがる。その辺は中共と違ってさすがだが、きょうび、ハリウッドで戦争関連映画をつくるとなれば、その市場はこの星全域であって、左へも右へも振らない監修が働くのはとうぜんだ。

映画ハクソーリッジにはタカ派が描いていることのたんじゅんさと、しっかりしたバランスの監修が働いていた。
おそらくメルギブソンは、デズモンドTドスが(自身と重ね合わせて見ることもできる)敬虔な融通の利かない信者であることに絶大な信頼を寄せていたと思う。
ホモフォビアというのは根っこにある生理だ。公的にはLGBTs差別反対のスタンスであったとしても生理ならば揺るがない。その頑迷がある。
要するに、この映画には、いい意味のたんじゅんと、いい意味の頑迷があった。だからいい映画にならざるをえなかった──のである。

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津次郎