劇場公開日 2017年5月27日

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「重なり合う「光」というタイトルの意味。」光(河瀬直美監督) ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5重なり合う「光」というタイトルの意味。

2020年5月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

視覚障害の方に携わる仕事をしている身としてはかなりグサグサくるセリフの多い映画だった。

「押し付けがましい」
「想像力が足りないのはどっちかしら?」

たぶん福祉やボランティア活動に携わる人間は常に自問すべき問題提起。広義でみれば子育てとか人材育成にも当てはまりそう。

本作でスポットの当たっている「音声ガイド」というものは何かや誰かへの支援そのものに似ている気がする。
押し付けがましいものは駄目、出過ぎた支援も不足のある支援も、支援される側は歯がゆく感じる。
そこを探って双方にベストの落とし所を探っていく明確な答えのない作業だ。

音声ガイドに関しては視覚情報を言語情報に直するという意味では言語の翻訳に近いんだなあと本作を観て思った。あまりスポットが当たってこなかった分野だと思うので、この映画を通して音声ガイドのことを意識できるようになれて嬉しい。

ストーリーについては、ロマンスという触れ込みだったけど、ロマンスというよりは人間同士の相互理解に関する側面が大きかったかなという印象。
ただ、登場人物たちと劇中作の映画の主人公・重造のシンクロからくるラストシーンへの持っていき方は素晴らしいと感じた。
全部観終えると「光」というタイトルが色んな意味と重みを持って感じられるところも良い。
光は視力の要素であり、きらきらしたプリズムであり、時に道標であり、時に希望であり、そのすべてでも、どれでもないものでもある。

視覚障害の男性を演じる小市慢太郎さんの静かで穏やかな表情が印象的だった。セリフは少ないのにとても心地よい存在感。

ゆめ