劇場公開日 2017年11月25日

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「言ってることがよくわかんない」光(大森立嗣監督) kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0言ってることがよくわかんない

2019年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 聞き取りにくいということもあるけど、この台詞が作品全体を象徴していた気がする。25年前の殺人を信之、輔、美花の3人がそれぞれ胸の奥に閉じ込めていたはずなのに、輔の父親が現れたことによってそのバランスが崩れてしまう。殺人の直後に地震、津波に襲われた孤島の美浜島。月夜に照らされて一本の光が海に輝いている絵が幻想的なのだが、この光の意味するものは受け取り方が様々であろう。

 信之の妻(橋本マナミ)との不倫を続け、慕っていた信之に対する思いを強固にする輔。何か復讐心でもあったのか?とも感じるのだが、これもラストに全て集約されているのか、島を失ったトラウマから殺してほしいと願っていたのかもしれない。一方の信之は美花への想いが振り切れなかったのか、テレビに登場する彼女を見てその想いが強くなった雰囲気だ。

 3人とも過去を消したいと思いつつも輔の父親(平田満)が現れてから、完全に消せなかった罪を再び背負うことになる。父親を殺す。一人殺しているのだからと、信之は簡単に「殺す」という言葉を吐く。娘が暴漢に遭ったときもそうだった。暴力には暴力・・・その台詞には、希望なんてない。絶望という言葉がふさわしい程の奈落の底。

 終盤の展開はオヤジが死んで勝ち誇ったような雰囲気だったけど、とにかく生きてることに価値を見出せない男女の物語となった。気になるのは、どこかのアパートの一室に掘った穴は、最初から輔を埋めるつもりだったのかどうかという点。せっかく掘ったんだからという理由ではないはずだ・・・

kossy