劇場公開日 2017年10月7日

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「編集という自浄作用が一切働いてない代物」あゝ、荒野 前篇 ぷらさかさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5編集という自浄作用が一切働いてない代物

2018年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

久々に映画見てて腹立ちました。
まず、前提として、だらだらと長く感じる映画が嫌いです。長いこと自体は罪じゃなくても、長く感じさせることが問題。つまり編集が機能していない。
本作は、最近の「大作」と銘打った邦画や、漫画原作モノにまま見られるように前後編構成。前篇2時間37分、後篇2時間27分、計5時間以上の「大作」。
いや、序盤は悪くなかった。主演陣は概ね好演してます。しかし、自殺防止フェスがうんたらのあたりから暗雲が垂れ込めてくる。というか、主演陣の頑張りで誤魔化されてた監督と脚本の不味さが露呈してくる。原作の時代設定を改変するのはまぁいいとして、自殺防止フェスのくだりでは現代の「空虚さ」を表現したかったんでしょうけど、監督と脚本、一部の役者が力不足。
こうなると白けてきてしまい、本筋の部分でも全てを台詞で説明しようとする邦画の悪癖と、関係者が自然集合するご都合展開が目についてきてしまう。
前篇だけでも長いのでだんだん見続けるのが苦痛になってきて、ようよう見終わり、この程度の内容に5時間かけさせてもらえる監督ってどこのどいつだよと調べたら、どこぞのしゃっちょさんみたいな人が手がけたものと知る。
なるほどそれは編集という自浄作用が一切働いてない訳だ。この作品、今時DVD/Blu-ray特典のメイキング映像でも、こんな何も生まれてないアドリブっぽい会話シーンカットすんだろってとこを残してます。そういう無駄な箇所はもちろん、作品の本質から離れた枝葉末節はカットして、贅肉を削ぎ落として映画作品として構成するのが編集という行程だと思うのですが。監督自ら時には身を切る思いで、もしくは監督が信頼する編集スタッフに委ねて、取捨選択する作業が行われてないように感じる。
というか「どこぞのしゃっちょさんみたいな人」じゃなくてきちんと書いておきますが、テレビマンユニオン代表取締役常務の岸善幸監督です。テレビマンユニオン制作のテレビ番組、日常的に見てますよ。好きな番組もそこそこあります。でも当然ながら、テレビ番組と映画は別物。
この手の変に高尚ぶった無駄に長い「大作」が一部で評価されるのは、邦画界には良い風に作用しないんじゃないかと少し思います。せっかく近年、スピーディでコンパクトに話を整理し、映画的クライマックスをきちんと作り、しっかり2時間強という映画サイズに収めるという当然の流れが、邦画のメジャー作品に出て来てるんですから。
ゆったりした時間の流れを表現した作品も、物語を語り切るのに長時間を要する本当の大作も、その尺に必然性があります。それらと、だらだらカットできてないだけの作品は違います。残念な出来でした。

ぷらさか