劇場公開日 2018年2月17日

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「後悔の詩」長江 愛の詩(うた) よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

3.0後悔の詩

2018年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

 この映画の主人公は長江と詩である。
 河口から源流までの長江の映像が素晴らしい。
 上海を出発するシーンなど、むせかえるような潮の香りと、船の油の匂いが鼻腔をついたかのような錯覚に陥った。
 道路と鉄道の二重構造の巨大な橋によって南京への到着が知らされると、今度はその橋の下に広がる葦原が映し出される。昔、この街を訪れたときにここを散歩して、若い男女の睦事を目撃した記憶が甦る。
 三峡ダムを通過するための閘門で扉が開くシーンでは、チン・ハオが涙を流すが、あの巨大さに圧倒されれば誰もが泣けてくるのではないか。
 ロウ・イエ監督作品ではおなじみのチン・ハオ演じる青年が、父親の遺した船で長江を遡り、これまた遺された詩集を読む。
 映画で詠まれる詩の内容は、今一つはっきりと理解できないものの、厭世的で、そして自分の人生を悔いている雰囲気が伝わってくる。
 映画は、父親の後悔を辿り、自分も後悔と出会い、そして長江を生活の糧にしていた人々の後悔を巡っているように思えた。
 一人の女性を愛しきることができなかった後悔。河とともに生きることの出来なかったことへの後悔。長江の恵みを放棄した沿岸の生活者たちの後悔。
 人は後悔をしたときに、果たしてどこまで遡ればこの後悔をせずにすむ選択をできたのかについて思いを馳せる。
 本当にこれで良かったのだろうか。どこからやり直せば、いま後悔をしていることから解き放たれることができるのだろうか。
 何百、何千万人もの流域に暮らす人々の後悔を押し流す大河を描いた「長江図」である。

佐分 利信