劇場公開日 2017年1月28日

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「強烈なアイロニー」エリザのために SHさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5強烈なアイロニー

2017年2月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

笑える

悲しい

決してルーマニアの社会というものに精通しているわけではないけれど、現状に対する社会的批判を盛り込んだ作品だということは容易に察知できる。
現実社会に幻滅し、そこから逃れようと幻滅した社会を食い物にして、再び社会に対して汚物を作り出し、それが巡り巡って自らに跳ね返ってくるという現状を見事に描いている。
特に脚本と音の使い方が効果的だったように思う。説明的なところは一切なく、自然な会話などで構成されていたにもかかわらず、展開や背景まで非常に明瞭に理解できた。決して単純な話ではないだけに、この伝達能力の凄さには感服してしまう。
そして、電話、携帯、乗り物の騒音、足音、人々の声などで見ている側を心理的に追い詰めて、ある種の緊張感を増しているような印象を持った。特に電話や携帯の音がやたら気になったし、非常に不可解に思ったし、それらが見事なまでに負の社会情勢へと繋がっていたように思えた。
最後のセリフなど思わず笑ってしまうというか呆れてしまうというか哀しいというか、とにかく秀逸だ。
これは決してヨーロッパの片田舎の話などではないなという思いで見ていた。
決して楽しい作品ではないけれど、スゴイ作品であることは間違いない。人によっては終始笑える作品かもしれない。

SH