劇場公開日 2017年2月18日

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「現代日本人のリアル過ぎる本性」愚行録 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5現代日本人のリアル過ぎる本性

2022年4月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

今作は、夏目漱石や太宰治の私小説を読んだ時のように、胸に突き刺さる言葉の連続であり、衝撃的な作品である。

週刊誌記者である主人公・田中武志(妻夫木聡)は、育児放棄で拘留中の妹・光子(満島ひかり)を気遣いながら、一年前に起きた一家3人惨殺事件の真相を追っていく。彼は関係者から被害者夫婦のことを聞くうちに、殺害理由が思い当たらないくらい善良な夫・田向浩樹(小出恵介)と妻・友季恵(松本若菜)の知られざる本性が次第に暴き出され、真犯人に迫っていくが・・・。

被害者夫婦はともに有名私立大学出身であり、付属学校から進学した学生だった。彼らとは異なり難しい大学入学試験を突破した一般学生との差が事件の背景になっている。現代は、貧富の差が拡がった格差社会だと言われているが、本作では、更に進んで、死語になった感のある、身分、階級、生い立ち、という言葉が飛び交い、実際に人々を苦しめている現実が露呈される。特に、主人公達家族の状況は、現代の家庭問題も反映していて悲惨であり、平等という言葉が空々しく聞こえる。

一年前の事件のことであり、インタビュー形式で、関係者一人一人に別々に話を聞いていくので、関係者は本音を吐露する。他者に遠慮しない建前なしの辛辣で自己中心的な本音は、聞いていけないものを聞いてしまった衝撃があるが、我々にもそんな感情が潜んでいることを否定することはできない。彼らの喜怒哀楽の少ない淡々とした話しぶりが不気味であり、凄味があり、何よりリアリティがある。眞島秀和、臼田あさ美、市川由衣など、芸達者の役者たちの演技力が光る。特に、妻夫木聡と満島ひかりの演技は出色の出来であり、大袈裟ではない抑制の効いた台詞、あまり変わらない表情で、心の中に秘めている憤り、怒りを見事に表現している。

真犯人の独白シーンが際立っている。何と表現すればいいのだろうか、人間の持っている全ての負の感情を詰め込んだ、切々とした独白は戦慄であり鳥肌が立つ思いがした。

観終わって楽しい気分にはなれない。しかし、絵空事でない現実を観たという実感が残る。リアル過ぎる現実に圧倒される作品である。

みかずき
ひなどりこあらさんのコメント
2024年3月23日

被害者家族の妻(松本若菜)は、外部進学ですね!臼田あさ美カップルがバイト先でお弁当を食べながら話しています。この点は、非常に大きいと思いますよ。

ひなどりこあら
琥珀糖さんのコメント
2023年8月29日

コメントありがとうございます。
お義母様
ご愁傷様です。
猛暑でお疲れになられましたね。

こちらも朝晩の風がやっと涼しくなって、ホッとひと息ついております。
9月からのレビュー楽しみにしております。
お礼まで。

琥珀糖
みかずきさんのコメント
2022年4月10日

こんばんは。赤ヒゲさん。
みかずきです。

ようこそ映画.comへ。
といっても私も2月に登録したばかりですが。

悶(あちらのサイトでは悶mon)さんからも、
先日、挨拶コメントを貰い、フォローさせてもらいました。
獅子王さんからも挨拶コメントを貰いました。
私のマイページのフォロー登録者から悶さんと獅子王さんを探して
フォローして下さい。

ぴあ映画生活に引き続き、宜しくお願いします。
また、楽しい映画談義をしましょう。

では、こちらのサイトへのレビュー投稿をお待ちしています。

-以上-

みかずき
赤ヒゲさんのコメント
2022年4月10日

みかずき様

どうもどうも、こんにちは。今日、こちらのサイトに登録しました。「ぴあ映画生活」ではたいへんお世話になりました。まだ、慣れてませんが、時々お邪魔したいと思いますので、よろしくお願い致します。

赤ヒゲでした。

赤ヒゲ