劇場公開日 2016年10月7日

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「当代ナンバーワンのアクション映画であるのは本作で間違いありません 感服です、参りました」ジェイソン・ボーン あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0当代ナンバーワンのアクション映画であるのは本作で間違いありません 感服です、参りました

2021年7月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

ボーンシリーズ第5作
監督にポール・グリーングラス、主演にマット・デイモンが戻って来ました
脚本は1作から4作までのトニー・ギルロイから、監督とクリストファー・ラウズに交代

クリストファー・ラウズは第1作から3作まで編集を担当して来た人
つまり監督の信頼がとても厚いということだが、その人が脚本の共同執筆ということは、殆ど監督が構想を仕切って、流れと詳細の肉付けをこの人がしたということでしょう

第4作の内容を踏まえていますが、物語が直接つながってはいません
第3作から、外伝の第4作を挟んで、第2章のスタートという内容です

ボーンの死別した父親がお話に出てくるのは、何だか安っぽいテレビシリーズみたいで少し不満なのですが、内容は流石に一級品
そんなことはねじ伏せられてしまいます

またトミー・リー・ジョーンズがCIA長官役で出演しています

大スターであっても、数々の映画出演で手垢のついた、それも70歳で見た目からも高齢過ぎるのに何故配役したのか?と疑問に思って観てました
しかし、それには意味があったのです

今作では、第3作のちょいと年増のヒロイン?、パメラ・ランディは失脚して退場しています
そして新しく登場するヒロインがとても若い女性だったのです
その対比を鮮やかなものにするために、トミー・リー・ジョーンズを配役していたのです

そのヒロインは、CIA のヒラ女性局員ヘザー・リー
超一流のプリンストン大学出身の才女で、Facebook のマーク・ザッカーバーグを思わせる巨大IT 企業のCEOとも顔見知りの同窓生
年の頃はまだ20代後半
強烈な上昇志向とIT技能を持ち、自ら売り込んでCIA のサイバー情報部長に若くしてのし上がろうとする女性です
アリシア・ヴィキャンデル28歳が演じましたが、ピッタリの配役でした
細く理知的です、でもまだどこか娘ぽさが残っています
しかし強烈な自負心を秘めているのです
もちろんとてつもなく美しい
しかし女を武器にしないのです
その美貌をひけらしもしないのです
才覚と度胸だけで世の中を押しわたろうという女性です
新しい時代の女性像です

つまりトミー・リー・ジョーンズは、彼女の引き立て役に必要だったということです

古いアナログ時代と新しいデジタル時代
男性中心社会から女性優位社会
こういうことをメインに据えていた訳です
ジェイソン・ボーンはこういう新しい時代をどう乗り切っていくのか?
これが本作のテーマだった訳です
正に46歳のマット・デイモンは、この二人の中間の世代であるのです

本作でのボーンの答えは、老害世代には退場してもらい、新しい世代には信用も信頼もしないというものでした

リアリティは相変わらず超一級です
序盤のギリシャでのデモが暴動に発展する中を逃げまわるシークエンスの迫真さは、凄まじいレベルです
2008年アテネで本当に起こった暴動をモデルしていると思われます
投石した15歳少年を警官が射殺した事件への抗議デモが暴動に発展したものでした

CIAの情報分析ツールは、使った事のある情報分析ツールの画面に似ていて機能や操作まで伺えるもので、微塵も嘘ぽさを感じさせません

ラスベガスのコンベンションのシーンも、そのものです
あのまんまです
本物のIT のコンベンションにしか見えません
ホワイエの小企業の屋台みたいなブースもあのまんまです
受付もあのとおりです
会場のバックヤードも実際の会場を使っているのは当然としても、スタッフの動き、物品の立て込み方、雑然さ、あのまんまです

そしてクライマックスのラスベガスのストリップ大通の大爆走!
もう仰天しました、度肝を抜かれました

あそこに行って、あの通りを車で走った事がある人なら、もう大変な映像だ!こりゃあたまげた!とその凄さがより一層実感できると思います
ひえええーっと声が出るレベルです

CG の嘘臭いものじゃなく、本物の車が、本物のあの大通りの見覚えあるところを爆走、中央分離帯を乗り越え、あの通行量の中を逆送して、衝突すれば何台もの車が実際に跳ね飛ぶのです

果てはカジノの正面玄関からファサードを突っ切って、スロットマシーンのあるカジノ内部にまで突入するのです
セットじゃなくて、本物のカジノなんです!
もう口があんぐりです

このラスベガスのシークエンスは、マット・デイモンが生まれた1970年の翌1971年の作品「007ダイヤモンドは永遠に」のラスベガスのシークエンスのオマージュになっています

トミー・リー・ジョーンズが演じるCIA 長官が宿泊しているホテルの高層階の部屋が、ジェームス・ボンドがいた部屋にとても良く似ています
もちろんストリップ大通りの爆走も、この作品が元祖でした
それを45年後に、本作は数十倍のスケールと迫力でアップグレードしてみせているのです

そのシーンを予感させるために、CIA長官がマッカラン空港からラスベガス市内に移動する車中を写します
車窓からラスベガスの遠景が小さく見えます
ラスベガスへ行ったことのある人間なら誰もが見たはずの光景です
あの道を真っ直ぐに進むと、例のストリップ大通りになるのです
絶対、そんなシーンになるぞ!とワクワクしていまう絶妙な仕掛けです

当代ナンバーワンのアクション映画であるのは本作で間違いありません
感服です、参りました

さあて次回作はどうなるのか楽しみです

あき240