劇場公開日 2017年9月9日

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「生死を彷徨う混乱した状況を体験する」ダンケルク ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0生死を彷徨う混乱した状況を体験する

2022年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

原題も邦題も同じで「ダンケルク」です。
「ダンケルク」は、フランスの大西洋に面した港街です。

登場人物にセリフで語らせるのではなく、映像で語らせるという演出が優れています。
・主人公がドイツのビラを拾い、イギリス兵はダンケルクに包囲され、投降するしかないという状況を語らせます。
・主人公がドイツ兵に銃撃を受けることで、ドイツ兵はダンケルク市内にまで、侵攻しているという状況を語らせます。
・イギリス兵はボルトアクションライフルなので、発射するたびにボルトを引いて弾を銃身に送り込まなければならず、連射はできません。
ドイツ兵は、発射速度は500-600発/分という突撃銃を使用しているので、連射できます。
イギリス兵は、ドイツ兵に対して、圧倒的に不利な状況を語らせます。
・主人公は、フランス軍の守る防衛線を超えて、走ってすぐにダンケルクの砂浜に到着することで、ドイツ軍がすぐ近くにまで迫っていることを語らせます。
・主人公が走る姿を大きく映し出すことで主人公であることを語らせます。
・イギリス兵に偽装したフランス兵は、何も話さないので、状況をしぐさで語らせます。
・救助したイギリス兵は、何も話さないので、状況をしぐさで語らせます。
・3機のスーパーマリン スピットファイアの編隊が、ムーンストーン号の上をダンケルクに向かい通過することで、同じ目的のために行動しているということを語らせます。

スーパーマリン・スピットファイアは、第二次世界大戦当初は量産化されていなくて、航続距離も短いことから、フランスに派遣されずに、ロンドンの防衛に当たっていました。
メッサーシュミットBf109も、航続距離が短いので、ロンドンまでは攻撃できませんした。
イギリスは、ハリケーンをフランスに派遣し、メッサーシュミットBf109と戦っていました。
ダンケルクで、初めて、スーパーマリン・スピットファイアは、メッサーシュミットBf109と交戦しました。

実話に基ずく、フィクションのストーリーで、伏線を張り、伏線を回収するので、すっきりとするストーリーです。
伏線に気が付き、回収できるかで、この映画への評価も別れます。
名言もあり、名言にどう感じるかで、この映画への評価も別れます。
戦争映画なので、人は死にますが、映倫区分は「G」でどなたでも鑑賞することが出来ます。
歴史に興味があり、第二次世界大戦に興味のある人には、お勧めの映画です。
CGは使用せずに、実際にスーパーマリン・スピットファイアやメッサーシュミットBf109等を飛行させて、撮影しているので、臨場感があります。
CGは使用せずに、ダンケルクの浜辺のシーンも大量のエキストラを動員し、撮影しているので、臨場感があります。
女性はほとんど登場せず、ロマンスの要素はありません。

上映時間は106分と短いですが、1週間、1日、1時間という時間が異なる3つのストーリーを防波堤、海、空という3つの視点から描かれるので、混乱させられますが、混乱した状況を体験させるという演出です。
誰一人として、状況を把握できない混乱した中で、皆が正しい行動をした結果、30万人を救出するという奇跡を起こしたということです。
歴史的な背景を知っていることを前提にストーリーは進みます。
歴史的な背景を理解していないと、ストーリーについていけない可能性があります。
「ダンケルク」について知らない人は、映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」を先に鑑賞すると理解しやすいです。

なぜ、イギリス軍とフランス軍がダンケルクに追い込まれ、救助を待つだけで、ドイツ軍と戦わなかったのは、ドイツ軍は、アレキサンダー大王がガウガメラで戦い、ペルシア王ダレイオスを敗走させ、勝利しのと同じ鉄床戦術を用い、少数のドイツ軍が多数のイギリス軍とフランス軍に武装を放棄させ、敗走させたからです。
鉄床戦術は、低機動で耐久力のある部隊が敵を引き付け、機動力の高い部隊が敵の側面や背後に回り込み、敵を攻撃し、敵を敗走させる戦術です。
ドイツ軍の低機動で耐久力のあるC軍集団は、マジノ線に侵攻し、マジノ線の要塞群に立てこもるフランス軍守備隊を釘づけにします。
ドイツ軍の機動力の高い装甲師団主力のA軍集団は、小型でガソリンエンジンを搭載したI号戦車、II号戦車で構成され、アルデンヌ森林地帯を抜け、ユンカースJu-87急降下爆撃機による正確な支援爆撃を受けて、ムーズ川を渡り、敵国のガソリンスタンドを補給に利用し、早い速度で進軍し、イギリス軍とフランス軍の背後に回り、攻撃することで、イギリス軍とフランス軍を総撤退させ、ダンケルクに達します。
ドイツ軍の機動力の高い空挺部隊は、防御陣地の後方に降下して、防御陣地を爆破し、混乱させ、機動力の低い歩兵主力のB軍集団が防御陣地を制圧し、ベルギーとオランダに侵攻します。
鉄床戦術については、映画「アレキサンダー」を鑑賞すると理解しやすいです。

ノリック007