劇場公開日 2016年6月17日

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「「笑うな危険」のキャッチコピー考えた人は天才」帰ってきたヒトラー ヨックモックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「笑うな危険」のキャッチコピー考えた人は天才

2016年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「笑うな危険」のキャッチコピーは素晴らしい。
観る前はその不謹慎さゆえに笑うことが憚られるように見えて
観た後に真の意味を理解できる。笑い事ではないわけだ。

確かに従来描かれていた、誇大妄想で猜疑心の塊で善意も欠片もないサイコパスでキチガイなヒトラーよりも
本作の合理的で行動力があり、ドイツへの愛国心に溢れ人間くさいヒトラーのほうが
遥かに恐ろしい存在のように思える。

日本人の自分が見ても魅力的に感じるヒトラーだが、でもやっぱり癇癪持ちでキレると手が付けられなく
人種差別もするし子犬も撃ち殺す。狂気もしっかり描かれているからこそ
よりリアルにその存在を感じられた。
特に、ユダヤ人に対するスタンスの生々しさが素晴らしい。
面と向かって罵倒するわけではなく、傷心のアヴァツキに対して
「大丈夫、クレマイヤー嬢はきっとユダヤの血が薄いと思う」
とフォローするあたりに、パフォーマンスだけが派手なニワカ人種差別者ではない
マジものっぽさを感じる。
一方で魅力は愛嬌のある人間臭さもさることながら、目標へと突き進むストイックさにカッコよさを感じられる。
自分が道化として扱われることも十分承知の上で、いかにすればドイツをより良い国にできるか
ヒトラーなりに考えて計算づくで成り上がっていく様は正統派サクセスストリーに見える。
現職政治家への痛烈するぎる批判に加え、極左政党を「ナチズム的だ!」と賞賛し応援し、極右政党をボッコボコに叩いて
果てはネオナチに襲撃されるという展開もなかなか心地好い皮肉だ。

ドイツの街ロケで集まったのだから、確かにインタビューはリアルなわけだ。
日本の田舎でやっても似たような感じになるだろうな。

「好機到来だ…」
続きが気になってしまう引きもお見事。

ヨックモック