劇場公開日 2016年9月22日

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「ハチャメチャ」真田十勇士 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ハチャメチャ

2016年9月27日
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鑑賞方法:映画館

単純

地雷臭がしたものの,真田丸を史実通りに再現したという話を聞いて見に行った。噂通りの実寸の真田丸の迫力と,CG 再現された大阪城などの建造物こそ見応えがあったものの,あとは突っ込みどころ満載で,あら探しするにこれほど相応しい映画もないのではと思わされる出来であった。

真田十勇士という話が成立したのは明治時代の講談であり,完全なフィクションであるが,戦国時代最後の合戦となった大坂夏の陣で家康本陣に迫った真田信繁の活躍は江戸時代を通じて伝説となり,幸村という諱も創作されて秀頼とともに加藤清正に救い出されて熊本城に逃げ延びたなどという話までが創作された。私は子供の頃に雑誌やテレビドラマで見た記憶がある。多少でもその当時の雰囲気が蘇って来るかと期待したのだが,甘かったようだ。

まず,予告でも気になっていた幸村が実は腰抜けだったという設定であるが,きっと何かサプライズがあるのではと期待していたのに,特に深い意味があった訳でもなかったというのにはホントにガッカリした。幸村が腰抜けだったら,何故十勇士が命をかけてまで主君を守って奮闘したのかが全く不明になってしまうばかりではなく,そんな求心力のない人物のために有力な武将が集まるはずもないのである。

実質的に十勇士を集めたのは猿飛佐助という話になっていたのには本当に呆れた。これでは真田十勇士ではなくて猿飛十勇士である。十勇士の扱いにも酷いムラがあり,佐助や才蔵がほとんどのシーンを支配し,他の八勇士はほとんどオマケのようなものだったし,真田大助を十勇士に入れてしまったために,穴山小助が存在を消されてしまっていたのも酷い話だと思った。三好兄弟に至っては満足に台詞も与えていないという扱いだった。

中村勘九郎を座長とする舞台が元になっているというためか,舞台臭が至る所に感じられて,これを映画でやる必要があるのかどうかと,見ている間中気になって仕方がなかった。配役もかなりのもので,48 歳で亡くなった淀君を 59 歳の大竹しのぶが演じていたのが一番気に入らなかった。しかも,幸村に適わぬ恋慕を抱いているという設定である。年齢的にも無理な設定だと思うのだが,仮にもこういう役を演じる予定があるのなら,「後妻業の女」で金の亡者を演じるのは遠慮して欲しかったものだと思った。勘九郎もだんだん亡父に似て来たようで,滑舌が良くないのがかなり気になった。

演出はもう,あまりのハチャメチャさに目が点になりっ放しであった。才蔵が羽織ったマントだけで空を飛ぶというシーンがあるのを紹介すれば十分であろう。軍議の席で幸村にあれこれ台詞を指示するのに糸電話を使うというのだが,天井から幸村めがけて垂らしたイヤホンのようなもので指示していたのには開いた口が塞がらなかった。この脚本家と監督は,ピンと張った糸でなければ声など伝えられないという実験を小学校でやって来なかったのだろうか?

合戦の場面ではたけしの座頭市を見習ったような CG の血しぶきが飛び交い,意外なほどグロかった。元々フィクションの十勇士を更にフィクション化したようなこんな映画の監督が堤幸彦だというのだから,別な意味でサプライズであった。これを自分の作品リストに入れられたら,私なら汚点と思ってしまうだろう。
(映像4+脚本2+役者2+音楽2+演出2)×4= 48 点。

アラカン