劇場公開日 2016年9月17日

「人間の生も死も営みも、漂いうつろう自然界のほんの一部。」レッドタートル ある島の物語 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人間の生も死も営みも、漂いうつろう自然界のほんの一部。

2016年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

台詞がないからじっくり観察しようと引き込まれる。
突然ファンタジーのような展開になるから不意を突かれる。
現実的な災害(どこかで誰かが書いているけど書かないでおこう)に見舞われるから身構える。
そして、何とも言えずに苦しくなる。

なんだこれ、わけわからないじゃないかと思った。
「人魚姫」に、「浦島太郎」や「かぐや姫」などなどいろいろな日本昔話の要素を読み取れというのか。
それともこれは、監督の短編「岸辺のふたり」(検索すればyou tubeで観れます)の焼き直しだとでもいうのか。
まるで解釈を読み人に丸投げしてきた大人の絵本のようだ。
なのになんだ、この、悲しい夢を見てめざめた朝のような、胸の苦しみは。

ざまあみろ、と思った。
ジブリの看板につられて観にきてポカンとしている奴、ざまあみろ、と思った。
文明主義や唯物論こそ至上であると信じている連中、ざまあみろ、と思った。
スクリーントーンのような単調な背景が、現代の緻密な作画のアニメへのアンチテーゼのようで、ざまあみろと思った。
映画がビジネスである以上、商業主義であることは間違いではないが、そんなのばっかりなのが間違いなのだ。「君の名は」も「聲の形」もよかった。だけど、シネコンで10本以上の映画を上映しているなら、そのうちせめて一本はこういう映画(アニメに限らず)をやってほしい。
この時代、こんなアニメを作ってくれてありがとうと思った。

栗太郎