「空でしか生きられない男たちを陽気に哀しく描く」華麗なるヒコーキ野郎 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
空でしか生きられない男たちを陽気に哀しく描く
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安田淳一監督がこの映画のことを念頭においていたかは知らないのだが、はからずも『侍タイムスリッパー』とシンクロするクライマックスで驚いた。
しょっぱなからネタバレしますが、、、。
かつての戦闘機乗りたちも、今では曲芸飛行で日銭を稼ぎ、やがてハリウッドで映画の航空スタントマンになる。そこでレッドフォード演じる主人公は、かつて第一次大戦で戦い損なったドイツの天才パイロットと遭遇し、二人は映画の撮影そっちのけで、命をかけた本気の空中戦を繰り広げるのだ。
女性が添え物的扱い、というのはレッドフォード関連作でよく言われることで、本作もまさにそのパターンなのだけれど、本作のヒコーキ野郎たちは結局なによりも飛ぶことが好きで、その気持ちがわかりあえる野郎の仲間たちといるほうが幸せなんである。スーザン・サランドン演じるバカっ娘が飛行機から転落して死んだときも、彼女を悼む心情がほとんど描かれない、というのは、もちろん悲しいはずだが、彼らのメンタリティと人生における優先順位を残酷なまでに露わにしている。思いの外こわいところに斬り込む映画なのだ。
ホモソーシャルといえばその通りだが、そういう生き方しかできない男たちがいたことを、自分も飛行機乗りだったジョージ・ロイ・ヒル監督がノスタルジックに描いている。これにもうちょっと政治性を足して噛み砕きやすくしたのが『紅の豚』、という気もする。
男のロマンに耽溺しすぎな部分はあるとは思いつつ、陽気さの裏に寂しさがつきまとう哀愁作としてもっともっと観られて評価されてほしい作品。
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