劇場公開日 2016年12月3日

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「街を覆い尽くす異様なテンションに戦慄」アズミ・ハルコは行方不明 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5街を覆い尽くす異様なテンションに戦慄

2016年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

冒頭から鮮烈な映像、そして特殊な時間軸を駆使したストーリーが炸裂。主人公ハルコ(蒼井)の暮らしぶりは、まるで嵐の前の静けさ、というか、20代後半の今をすっかり抜け殻みたいにして生きている。そんな彼女がこの街で何を見て、何を感じて、何を失ったのかを本作は透明感のある映像で描きつつ、もう一人の主人公アイナ(高畑)の時間軸では、ハルコが謎の失踪を遂げた“後の世界”が綴られていく。かくも二人のヒロインは全く異なる時間軸を生きているが、しかしそのエピソードが交互に描かれる構成上、すぐ隣同士に息づいているようにも思える。こういった遠いようで近しい特殊な関係性を浮かび上がらせるところが極めて独創的。さらに少女ギャング団やグラフィティアートなどの変数を掛け合わせ、街を覆い尽くした暗黒模様をいつしかある種の爽やかさにまで転じさせていくダイナミックな演出に、弱冠30歳、松居監督の並々ならぬ力量を感じた。

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牛津厚信