劇場公開日 2016年12月17日

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「TIFFGP」ニーゼと光のアトリエ SHさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0TIFFGP

2015年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

知的

冒頭数分で、この映画における意志を見いだした。それは、音によるイマジネーションと映像によるリアリティーの追求というのも。
とかく、映像のリアルさというものは徹底していたように思う。最近ありがちな偶然性を求めたような手持ちカメラの多用というものではなく、あくまでも作者の意志をそこに込めようとしていたように思う。スクリーンの中に完璧に構築された世界、実話をもとにしているとはいえそこにあるのは虚構の世界、それをあくまでも自然な形で見ている者に伝えるがために、虚構を真のものに仕立て上げるために、とことん画面が揺れ続ける。ニーゼは実在した人物であり、嘘偽りない真の姿を伝えるという意志の強さが画面からにじみ出ていた。
ぶれる映像といいながらも、その一つ一つの映像というものは計算され尽くされたもののように思えた。どこに焦点を当てるのか、どのようにカメラを動かし、どのようにフレームインしてくるのか─すべて完全なる自然なのだ。矛盾した表現かもしれないが、まさに劇映画にしてドキュメンタリーのような印象を持つ。(つくられた完全なる自然─いわゆる明治神宮のようなものか…分かりづらいか。)
リアルに展開される映像でありながら、心を揺さぶられそうになる感動が所々で押し寄せる。それというのも音や音楽の効果が大いにあったように思う。今さら映画における音の効力などということは述べるものでもないけれども、効果的に活用しているものはそれほど多くないはず。そのうちの一つがこの映画だと思う。バッハで自然に涙があふれ出た。
兎に角、最初から最後まで、濃密であり、ニーゼというタイトルそのままに描かれた、グランプリ、最優秀女優賞にふさわしい作品だった。

SH