「唯一無二の馬人形」ナショナル・シアター・ライブ「戦火の馬」 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0唯一無二の馬人形

2021年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

スピルバーグの映画を先に観て、あらすじをつかんでいたので良かった。
もし観ていなかったら、持ち主がどんどん変わっていく流れや、戦争シーンの状況はピンとこなかったと思う。
ストーリーの点では、かなり分かりにくい舞台作品だ。

この舞台作品がスゴいのは、何と言っても「ハンドスプリング・パペット」、すなわち、3人で操る馬人形だろう。
本物のような自然な動き、木組みとは思えない堂々としたフォルム、そして、リアルな馬の“いななき”。不可能に思えることを、可能にしている。
カメラでアップにしても、アラが目立つどころか、素晴らしさがより際立つ。

セットがないので小道具の出し入れで対応しているのだが、戦車が登場するシーンは迫力がある。
舞台は広いわけではないが、回り舞台を上手く使って、スケール感は抜群だ。
音楽も良い。いかにもイギリスの歌らしい、独唱や合唱が場面を盛り上げる。効果音も適切である。

スピルバーグの映画の方が、情感豊かで分かりやすいが、本舞台の馬人形は、唯一無二の鑑賞体験だった。

Imperator