劇場公開日 2016年1月9日

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「人間の行動と記憶」世紀の光 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人間の行動と記憶

2019年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

人智を超える世界の理のようなものがあるとして、それは人間には知覚できないのだろうけど、この映画にはその理の一端に触れているような気がする。緑に囲まれた病院で医者や患者たちの日常が描写される前半、それとほとんど同じ様な描写を今度は近代的な街の病院で展開する。なぜ、2つの病院で同じような光景が繰り返されているのかは描かれない。それはなぜか反復される。銅像や排気ダクトに吸い込まれる光景は、なぜかわからないが異様な強度に満ちている。前半の舞台となる病院を囲む緑は、アピチャッポンの映画ではお馴染みの森を想起させる。あの病院はなんだろう。後半の近代的な病院では、病院の一区画を取り壊しているのはなぜなのか。その区画を隔てるドアに向けてボールをぶつけ続ける患者はなんなのか、そうした不可思議なイメージについて考えているうちに、映画はエンディングを迎える。エンディングのあの踊りもまた不可解だ。
人間の行動は、ときに説明のつかないものがある。そんな説明のつかない何かに対して、この映画は触れている。確かに人間はこうだ、という何かに触れている。そんな気にさせられる。

杉本穂高