劇場公開日 2015年12月12日

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ハッピーアワーのレビュー・感想・評価

全26件中、1~20件目を表示

5.0世俗な社会の切れ目に垣間見える聖性のようなもの

2022年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

徹底して世俗なものにカメラを向けながら、ふとした瞬間に聖性が訪れる。そういう瞬間は5時間の間に何回もある恐るべき作品だった。ワークショップで、怪しげな鵜飼という男が、ナナメに椅子を立ててみせる。あの不思議な、何か世界に法則に切れ目が入ったような瞬間を捉え、それを境に4人の女性が生まれ変わったように変容していく。後に4人の女性の一人が鵜飼にクラブに連れていかれる。そこで彼女は、キリストのように両手を広げて、フロアの客たちにあおむけに運ばれる。世俗の中に異様な聖性のイメージ。低予算のワークショップだから、ロケ場所もよく見かけるありふれた場所だが、そんな場所で私たちが気が付けない異様なものをカメラが捉えている。実は、私たちの生きる社会でも目を凝らすと、そういう聖性が漏れているのだ。
奇蹟のような出会いや再会が何度も描かれるが、それがご都合主義ではなく必然に見えてしまうのは、そういう風に漏れだす聖性ゆえだろうか。
5時間しゃべりっぱなしの映画でもある。濱口映画は声に力がある。映画にとって声は何か、私たちは充分に考えてこなかったのかもしれないと思った。

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杉本穂高

2.5飽きなかったけど

2023年12月3日
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怖い

ずっと夢中です見ていたわけではないが、長い時間飽きもせず見終わった。途中まで好意的に見ていたが、終盤の展開には辟易とした。

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おのもん

5.0映像も会話も凄い

2022年10月7日
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鑑賞方法:映画館

良い映像と個性的な会話があれば無敵だということを実感させる映画。
クラブ、こちらを見る目のシーンがめちゃくちゃ良い。
セミナーや朗読会が妙に長いのも観客の同化という意味では正しいと感じた。

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ルル

0.5酷い棒読み

2022年9月26日
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単純

寝られる

WOWOWで鑑賞。

濱口監督の作品はボソボソ話す大根役者が必ず主人公。

役者は感情を殺すように指導されてるのか?大根役者を使うのが好きなのか?

この作品では、スイスの映画祭で女優が最優秀女優賞を受賞したと書かれてますが海外では棒読みはわからないか。

いや、最優秀って?

本当ですか?

酷い演技と棒読みに見る気も失せます。
眠気が襲ってきます。

離婚話をするシーンとか棒読み過ぎて笑いが込み上げてきました。

そして、魅力的な登場人物が1人も居ない。

「寝ても覚めても」は少しはマシでしたが「ドライブ・マイ・カー」は主人公の西島秀俊の棒読み演技に途中で眠くなって挫折。

今回も時間が無駄だと感じて挫折。

濱口監督の作品は私には無理みたいです。

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チアゴまておチロ

0.5評価高過ぎ

2022年8月19日
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さすがに長過ぎる
2時間という枠に囚われない事と無駄を省く事をせず垂れ流すのは違うと思う

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cia

4.5絶えざる懊悩の果て 自己倫理の手触り

2022年8月9日
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とりあえず何か褒めてみようと思うのだが、何一つ気の利いた褒辞が思いつかないのは、本作がたかが数文字、数行の言葉では決して攻略することのできない深みと広がりを有していることの証左だ。世界が単純な二分割法によって白か黒かに塗り分けられつつある昨今だからこそ、この緻密で複雑なパズルのような大作はますます大きな意味を持ってくるのではないかと思う。

たとえば純の夫の公平ははじめこそ本当に腹立たしい奴で、離婚裁判の最中に自分が不利になることを知っていながらも必死に自己自身を開示する純に対して「君に勝ち目はない」などと言い放つような冷血漢だったのだが、後半の朗読会シーンでは、若手作家の詩情溢れる短編小説に対して的確かつ真摯な感想を述べている。豪放磊落な性格で4人の仲を取り結ぶ芙美も職場では後輩に対してお局的な嫌味を言いまくっているし、ワークショップで不思議な存在感をみせた鵜飼はそこいらの女に手当たり次第しょうもない口説き文句を垂れる。

いうなれば登場人物の誰も彼もが明と暗、正義と悪、男と女、自我と非我といった両義性のあわいをゆらゆらと揺れ動いていて、引き裂かれていて、要するにどこか一点に固着するということがない。もちろん「○○はかくあるべき」という使い古しのコンセンサスに拝跪することもない。

とはいえ一方で本作は安易な相対主義的言説、すなわち「逃げの一手」としてのオープンエンドとも一定の距離を取っている。終盤にかけて諸々の人間関係がドミノ倒しのように崩れていくさまは見事としか言いようがない。これはひとえに彼らが両義性の波に揉まれながらも、最終的に自分なりの選択に踏み切ったがゆえの悲劇(あるいは喜劇?)だ。

生きていれば否が応でも判断せざるを得ない状況がいくらでもある。しかしそのような構造そのものに反旗を翻したところで、それは空想上の遊戯に等しい。彼らが絶えざる懊悩の末に手にするのは、「○○はこうあるべき」とも「みんな違ってみんないい」とも様相を異にした、いうなれば自己倫理の感覚だ。たとえば芙美が鵜飼の妹に「好きな人とする性行為しか意味がない」と披歴するシーンがあった。ありきたりの言葉であるはずなのに、それは確かに彼女だけの言葉だった。終盤はそういう自己倫理の重みを湛えた素晴らしいシーンがいくつもあった。

また、終盤のドミノ倒し的展開にアクションスリラー的な作為性を感じないのは、おそらくそれ以前の4時間以上にもわたるドキュメンタリー的なナラティブが土台として存在していたからだと思う。あの丹念な言葉と言葉の、あるいは人間と人間の交通の蓄積を思えば、崩壊は必然だったと誰もが納得できる。本作における人間関係の崩壊は「目的」ではなくあくまで「結果」なのだ。

つらつらと所感を書き連ねてきたが、なんだかんだ一番すごいのは本作が物語映画としてメチャクチャ面白いということかもしれない。5時間といえば『七人の侍』とか『ゴッドファーザー2』の1.5倍くらいの時間だ。そのような長丁場をほとんど言葉のやりとり(しかも法廷劇のようなド派手な口上さえない)だけで映画として成立させてしまう濱口監督の手腕にただただ脱帽するばかり。『ドライブ・マイ・カー』でのカンヌ脚本賞受賞もむべなるかな、という気持ちだ。

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因果

3.5

2022年5月7日
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濱口竜介監督作品を観ていると、
発狂したくなる

発狂したくなるくらいに、
悔しくて、腹立たしくて、嫉妬してる

でもいける
いってやる

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JYARI

4.5500分を超える長さだけど不思議と飽きない。 普通の映画だとカット...

2022年4月24日
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鑑賞方法:映画館

500分を超える長さだけど不思議と飽きない。
普通の映画だとカットされるような登場人物の行動、心情を細部まで描いている。これが観ていて面白いし、まだまだ観ていたいなと思う。

贅沢な時間づかいの中で特に2つのワークショップが印象的。
最初のワークショップは講師の空っぽそうな感じと内容でこんなんで良いんだと驚きつつ、相手のはらわたを聞くつもりで人と向かい会えていないなとか思ったり、
2つ目のワークショップから上辺だけでなく、自分の心を言葉として伝えてなくちゃなぁとか思わせてくれた。

決定的な何かがあったわけではないが、不安や寂しさなど様々な感情から起きるすれ違い、衝突。
観ていてもどかしくもなるが、こればかりはどうしようもない。ラスト、私はちょっと苦々しく感じた。

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いたかわ

4.0長かったけど…

2022年4月9日
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女性の友情が壊れていく様子が、とても上手く描写されていた。女性でないので、女性の考え感じかたに共感はできないものの、勉強になりました。人を理解することはこんなにも難しいのか…。本音が聞ける機械が有れば良いのに🎵

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ろくさん

4.0ドキュメンタリー手法の金妻(古い)

2022年4月8日
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それこそフレデリック・ワイズマンが「金曜日の妻たちへ」を撮ったらこうなるのでは?という感じのドキュメンタリータッチの壮大な現代家族ドラマ。
やむにやまれぬ人間達の行動によって、喜怒哀楽が、静かに、しかしダイナミックに積み上げられていく。
まあ一通り生きてきた「おばちゃん達」(「おじちゃん達」もか)の曲がり角と再生の物語ですかな。

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百万両

4.5素晴らしい。

2022年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

60年近く経過する超レトロな映画館での鑑賞。

5時間以上の映画とはどんな映画だろうか。
自分はそんな映画をしっかり観ることができるだろうか。
不安と覚悟を決めて鑑賞。
正直、面白かった。
5時間無駄なシーンも無く。
誰一人として知らないキャスト。
始まりは棒読みみたいなセリフ。
でも徐々にリアリティに思えて、
ワークショップでも朗読会でも
自分がそこにいる様に感じる。
こんな映画は初めて。

7,8年振りにパンフレットを買ってしまいました。

素晴らしかった。

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ilctr

4.5キャスティングは最大の演出

2021年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なんだか凄いの観ちゃいました。3部構成5時間超。
全く飽きない。眠気もない。引き込まれて引き込まれて。
まさかね、まさか、こんな展開になるとは?の始まりのシーンから一気です。
一部、二部、三部 全てスキ無し、無駄無し、息つく暇なしです。
休憩時間中の続きが待ち遠しい気持ち、こんな気持ちいつぶり?

人間関係や、人間同士のコミュニケーション(友人、夫婦などなど)の根幹となる人間の気持ち、価値観、考え方、そこから導かれる生き方・・・こんなこと永遠に解き明かせないんじゃない?・・・なことに真正面から向き合って、ほんの一部ではあるけども、人間そのものを切り取る・・4人分。

そりゃ、5時間でも足りないですよね(笑)

まず、演出のキーであるキャスティングが素晴らしい。演技経験がほぼ無い方々を起用されたことが、作品にリアリティと説得力を生んでいると思います。テイク数も少なかったんじゃないのかなー?なんて勝手に推測。生々しく、体温を感じるんですよね、映像から。

演者のみなさん、最初はセリフ棒読み気味ですが、どんどん演じることに慣れてきた感じになり気にならなくなります。棒読み気味でも朴訥な感じが場面によっては緊張感、緩和を生み出してますし、あのなんとも形容し難い「間」。あれは演出なのか?いやいや、長回ししてるので演者たちが作った、いや経験がないからこそ生まれた「間」なのでしょう。
演技としては稚拙と言われるのかもしれませんが、僕はとてもよかった絶妙なのです。その存在が。
また、カメラワークは単調のようで、顔のアップ、切り替え多用で動きがうまれ、会話劇をより深く描いていると思います。なぜなら女優陣含め皆演者の表情が良いんです。
役柄と同じ生活されてるのでは?なんておもっちゃいます。全員。

あぁ、ここまででかなり書いてしまいましたが、もう少し。

さてさてお話。よくもまぁこんなお話つくれましたね!と驚嘆です。日本映画すごいじゃん!
4人の37歳の女性がそれぞれ異なる生活基盤のもと問題(問題の種)を抱えつつ生活していく。
それぞれの繊細な心の動き、微妙な違和感、心の中の揺れ動きを映像としてを丁寧に丁寧に、そうですねぇ例えるならひと針ひと針刺繍を作っていくかのように描いていきます。
若干、「ん?」と思うようなイベント出来事はあるものの、あまり気になりません。出来事で成り立つストーリーではなく、出来事によって変わる心情がメインだからかな?

本作は自分を知るとは?他者を知るとは?。
他者の中の自分。他者と対する自分。(色んな)社会の中における自分。それらを通じて「自分」を見出し、「自分に素直に」次の扉を開くまでのお話だと思います。もちろん他者も知る中で。
自分を理解し、認めて受け入れることはできているようでできていない。・・・自分自身と向き合う勇気がないからなのか?自分をわかっていると勘違いしているから?
いや、何かから(ひとそれぞれの手枷足枷)解き放たれていないからかもしれないです。

自分を理解し、受け入れ自分に素直になる。。。。素直に行動する。。。素直に求める。。。
その結果はもしかしたら一般的に言われる幸福ではないかもしれないし、一般邸に言われる苦労しかないかもしれません。自身の置かれている立場や環境によって変わるのでしょう。
しかし自分に素直になるとは揺るがない強さを手に入れることだとも思います。
でも、人間としてはもっとも幸せ(ハッピー)なのかもしれません。それが。

そして、わかったと思っても、また新たなことも発見したり調整が必要になったりするのでしょう。
そんなに単純じゃないですからね、人間なんて。何度も繰り返すのでしょう。他者と自分の「解り合い」を。
他者と自分の「解り合い」
それこそが、自身を前に進めるためのものであり、他者を前に進めるためかもしれません。
その時間こそが「ハッピー(を作る)アワー」なのかも?
それを実現してくれるであろう他者との時間は友人との時間。
短いながらも「ハッピー(な)アワー」。

ナイスな題名だと思いました。

こーいうドラマ、地上波で多くの方に見てもらいたいと心から思いました。
人間関係がやたら殺伐感が増し、コミュニケーション不足が言われている昨今だからこそ。

最後にこれからご覧になる方々へ。
一部で描かれるワークショップはしっかりと観てください。本作のテーマがぎゅっと詰まっています。

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バリカタ

3.5濃密な時間

2020年12月31日
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鑑賞方法:映画館

さすがに長いだけあって、描写が丁寧に描かれ臨場感があった。
4人が揃った時、2人になった時、夫婦の会話、それぞれの変化をありのままをさらけ出されて、その外側で見る感覚。客席側の一体感みたいな物を感じた。

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パプリカ

4.0平凡の大功徳

2020年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

夏目漱石は「文学論」の中で、J.オースティンの小説を「平凡の大功徳」と評したそうだ。
この映画では、普通では考えられない長時間にわたって、J.オースティンさながらの“卑近”な話が、「寸毫の粉飾」を用いずに描かれる。
どこかで聞いたような愚痴や口げんか、「こういう奴、居るな~」という登場人物。
さらに、第1部の「ワークショップ」や第3部の「朗読会」のシーンは延々と続き、少し居眠りした後に目覚めても、まだやっているほどの長さであった。

その結果、自分の中の“日常感覚”が生々しく反応する。映画を観ているのに、実生活の中で聞いているような感覚に陥るのだ。
あたかも自分も参加しているような、あるいは、“盗み聞き”しているような感覚だ。
そのことで、漱石の言葉を借りれば「奇なきの天地を眼前に放出して」、「客観裏に其機微の光景を楽しむ」効果が生まれる。
“劇的”な演出とは、真逆の手法だ。
時間感覚も、マヒしてくる。
頭と目をフル動員して、激しい展開を期待する映画なら、次第に疲れてくるだろう。しかし本作品の、実生活のひとコマのような“まったりした”時空の中では、317分でも長く感じない。

上記と関連して、この作品には「謎」がある。
「打ち上げ会」のシーンなどで、役者の台詞が、しばしば“棒読み”になるのに、なぜ面白いのか?である。
台詞のあいだ、役者の身体の動きが止まっていることも多い。
現実には、人間は考えながら、そして身体を動かしながら喋る。他人の話に割り込むことも、しばしばである。
だから、あれほど抑揚の乏しい、言語明瞭かつ理路整然とした会話は、現実にはあり得ないし、映画の台詞としてさえ異常である。

身体の動きを止めた“棒読み”は、役者が“素人”だからというだけではなく、監督が積極的に求めた演技だろう。
この場合、演技の要素は、すべて台詞の中身に存在する。
だから観客は、もはや映画でありながら映画を観ているのではない。複数人による“朗読による演劇”を観ているのだと思う。

一方、“棒読み”とは逆に、ハッとさせるほどに、自然な発声による会話も出てくる。
冒頭の「お弁当」のシーンや、「朗読会におけるQ&A」のシーンなどは、現実世界の何かのトークを、そのまま脚本にねじこんだと思われる。
脚本家が、頭で書いたのではないはずだ。

映画館の客席には、女性も目立った。
しかし驚いたことに、脚本家は3人全員、男らしい。その男たちが、女性の“生活”を描く。
この作品が本当に成功しているかどうかは、女性がどう感じたかで決まると思う。
自分としては、ビターな家族関係や性愛をテーマにした“だけ”の本作品は、非生産的で面白くはなかった。

ただ、各々の登場人物が、ズレながらも絡み合い、複雑な経路を辿りながら、伏線を回収しつつ、それぞれのカタルシスへと向かっていく“織物”のようなストーリーは、とても狡猾に吟味されていると思う。
自分としては、結末よりもそこに至るプロセスが面白い。“あけすけな”独特の会話劇は、間違いなく一見に値する。
丸1日費やしたが、良いものを観た。

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Imperator

5.0【自分と向き合うことと、解放感と】

2020年12月29日
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自分自身と、自分の奥底に潜むものと向き合うのは大変だ。
だが、そうしないことには、自分のことを好きになれなかったりする。

この長い長い作品を観ながら、僕達は自分自身を理解しようと試みることになるのではないのかと思う。

女性は女性としてシンパシーやエンパシーを感じるだろう。

また、男性は、女性4人が主人公だけれども、その視点で男性としての自分に共通する部分を見つけたり、当然、彼女たちを取り囲む存在としての男性を通じて感じるものもあるだろう。

この作品を観た、その日の夜、Eテレの100分で名著「ディスタンクシオン」の最終回で、著者である社会学者ブルデューの随分古いインタビュー映像が流れた。
移民労働者に関する著作に収められた移民との対話を読んで、自分自身を見出したという人達の反響が多かったこと、中には、自分を理解することが出来たという女性もいたことが語られていた。

大袈裟な言い方かもしれないが、この「ハッピーアワー」は、登場人物を通して、僕達を自分自身に向き合わせる、そんなエネルギーを秘めている気がするのだ。

僕は、ジェンダレスな社会を志向する方だ。

ただ、この作品を観ながら、「批判的な意味ではなく」、ジェンダーから逃れることは、改めて難しいなと感じるし、そして、この事実と折り合いをつけながら生きていかなくてはならないのだろうなとも思う。

話は変わるが、鵜飼がボランティアをしていたと言っていた東日本大震災の被災地、神戸、そして、有馬は、もしかしたら、象徴的に使われたのではないか。

神戸は阪神淡路大震災で被害の大きかった場所だし、有馬は、こずえの朗読でも出てきた通り、有馬高槻断層帯でも知られる場所だ。
この作品は15年の公開だが、18年の大阪北部地震は、この断層の一部が動いたものだ。

僕達は、生きていく中で、悩みなど様々な歪(ひず)みを抱えて過ごしている。
純の起こした離婚裁判は、長いこと蓄積された断層の歪みの反動のエネルギーのようなもので、更に、これに突き動かされたように、桜子、芙美、あかりの人生も揺り動かされる。
活断層が動いた後の余震のようだ。
何事もないように立っていたビルや住宅、道路や、畑や田んぼにも亀裂が入り、元に戻すのは容易ではない。
だが、そこに折り合いをつけて、また、僕達は生きていかなくてはならないのだ。

前段で、ジェンダーと折り合いをつけながら生きなくてはならないと書いたが、そもそも、僕達の存在そのものが微妙なバランスを保ちながら生きている。

あの、鵜飼がワークショップで見せた、一点立ちの椅子のようだ。

あっと言う間に、倒れてしまう。

丹田に耳を当て、耳を澄まし身体の音を聞いてみたり、背中を合わせて呼吸を合わせて立ち上がることが出来て、楽しくても、何かを感じても、それは、何かを理解したことにはならない。

やはり、言葉は重要だ。

だが、時として、言葉は耐えられないほど軽く、心の奥底を表現するのが難しかったりする。

こずえの小説の中に出てくる拓也を模したのではないかと思われる人物。
こずえの気持ちを窺い知ることが出来ても、こずえが拓也に直接好きだと言う方が、本当はより伝わりやすかったり。

だからといって、更に踏み込んで、誰かと肌を擦り合わせ、肉体を合わせても、本当に欲しい回答を得られるわけではない。

有馬で4人の写真を撮ってくれた滝好きの女性。
父親が祖父の死を隠していたことを話す。
父親はよく嘘をつくのだと。

純は、それを聞いて何を感じていたのだろうか。
僕は嘘ではなかったのでないかと思う。
父親は、祖父が生きていると信じたかったのではないかと。

純が、公平に対して起こした離婚裁判には、真実じゃないものもあるのかもしれない。
しかし、溜まりに溜まった歪(ひず)みから生まれた公平に対する感情は真実だ。

何かを掴みかけていると言って、身重で一人旅立つ純。

事故を起こした拓也にざまみろと言ってやると話す芙美。

家を出ていかないし、良彦に謝ることはないと言い放つ桜子。

怪我をしながら、複数の男と寝て、桜子に詫びてやり直したいと、純の帰りを待って、また、旅行に行きたいと言うあかり。

自分に向き合って、何か吹っ切れたような4人は、前よりも、もう少し、いや、もっと自分を好きになっているに違いない。

※ 年末で過去放送のドラマの再放送オンパレードだったりするが、この作品は夜中にでもテレビ放送してあげたら良いのにと、日本中の人に見て欲しいと思うくらい、素敵な作品でした。

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ワンコ

4.0あっという間の317分

2020年12月26日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

リバイバル上映で初めて観ました。
最初はセリフ棒読みな感じでちょっと不安になりましたが、物語が進むにつれ4人の女性の人生や人柄が見えてきて、途中からはどっぷりハマってました。なんだか友達の日常を垣間見てるような感覚。
317分はあっという間でした。「もう終わっちゃうの?」と思ったくらい。続編ないのかなー。素晴らしい作品でした!
終演後に濱口監督、菊池葉月さん、渋谷采郁さんの舞台挨拶もあって感激でした!

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Yoshi K

4.0引き算が凄かったな

2020年12月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

怖い

ついにパンドラの箱を開けてしまった…。濱口竜介監督の317分の怪作。一言で感想を述べるのが難しいが、淡々と、執拗に、ともすれば冗長とも感じられるほどの引き算の演出を重ねることで、日常の事件、すれ違い、瞬き一つを取っても非常にドラマチックに感じられました。怖かった。

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みな

3.55時間17分

2020年3月27日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

なんと5時間17分という長尺作品で、観終わった後には達成感が得られる。
30代後半の女子の友人4人が主人公、あかりはバツイチの看護師で物事をはっきりさせないと気に入らない。
桜子は専業主婦で義母と同居、中学生の息子がいる。
編集者である夫を助ける芙美は二人の関係が上滑りしていると思っていた。
純は離婚裁判中で、妻に浮気され離婚を持ち出された夫は、理系で別れる気はないらしい。
この4人が人生を変えていこうとするのだが、男たちが邪魔をする。
主演の4人は素人で演技経験がないとのことだが、とんでもない。

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いやよセブン

4.0気持ちを見せ合う難しさ

2020年3月24日
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静かな映画、なのに監督さん、描きにくいもの、言葉になりにくいものをたくさん詰め込んで、5時間の時間量で描ききってやろうと、力技です。

友人、親子、夫婦といえども、心を素っ裸でさらけ出せるほど鈍くない。さらけたところで理解しあえる保証もない。トランプ♣︎の「神経衰弱」みたいに、気持ちのカードをめくって、答え合わせ。違うとみんな揺らぎます。淡々としてますが、ほんとは怒濤の嵐が吹き荒れている。でも決して表には出さず。静けさ、緊張感。
本音を探り合い、答え合わせするのは疲れる。ガッカリすることに怯えて一人、じっと耐えています。男たちは、自分とすら向き合わない。自分の気持ちを理解する、という発想すら封印。向き合うと、淡々と進めていけなくなるからね。万が一にも弱さに気付いたら、大変だ。キャパオーバーで、精神が壊れ、日常が壊れかねないものね。
見ざる・言わざる・聞かざる、というのが日本では先人の教え。器が小さいなら、最初から入れるな。先人は、厳しいですね。登場人物の一人の妹が「兄貴は、空っぽ、というのがバレないようにしてるんじゃないですかね」と評していた。リアリティあります。でも空っぽだから出来る役割を果たしているようです。

時に限界超えて、マグマが噴き出します。
ドロドロと空っぽ、どちらがマシか。私もわかりません。

どう生きていけばよいか、正解は簡単にはわからない。わかった人がいても、その人の正解が、自分の正解かわからない。
やっと見つけたと思っても、永遠の正解でもない。一瞬ですね、ハッピーアワーは。

ですが、みんな、意外とそれぞれに根は強い。
そして冷たい訳でもない。お互い心配。気にしてる、良くも悪くも。で、それがお節介や押し付けになっていないか、またチェックし合うのですが。気遣いは、「気にしぃ」となり、もう無限ループ。サジ加減はそう上手くはできない。近付いたり、離れたりしながら、流れていく。

コウヘイさんという、じゅんさんの夫、この人だけは私、本当に怖い。何が怖いって、離婚を望むじゅんさんに対し、冷静に悪意なく、「理解出来るまでは諦めない」精神で追いかけ回し、そこに研究者魂を発揮するところです。初めて恋したのですかね...
一生をかける気ですね、おい、それ愛じゃないよ。
完全なストーカー行為、相手の自由を侵害してるぞ。
頭良くて、小説の読解力も高いのに、コウヘイさん何故わからぬ。
執念。飽くなき探究心。理解できれば、対象を手中にできるという達成意欲と向上心か。

「こうしかできない。」
とコウヘイさん。
まあ人間ってそういうものかもしれませんね。
その方が楽で、ハッピー。一人よがりですが。

他の登場人物も「こうしかできない」症候群。
一人のハッピーアワーを、誰かとのハッピーアワーにしようと、実は健気に努力して。そして上手くいかず、もがいた挙句、諦めて。でもまた信じようとして。
愚かかもしれませんが、絶望しないことだけが、生きるには必要。
ハッピーアワーの夕焼けは、一人で見ても充分美しい。なのに誰かと見れたらもっと美しいかも、とつい想像して自分で寂しさの種を蒔く。でもまたやがて、そこも抜けて、もう一度夕焼けの美しさに気付く。幸せにも正解がないのでしょうね。

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xmasrose3105

3.0眠くならなかったのは想定外

2017年4月29日
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鑑賞方法:映画館

長丁場に覚悟したが意外に観れる!
素人台詞とはこういうことかと、最後まで変わらなかったが、それ以外は集中できた。
なんか、全部男が悪くみえてしまう。
終わり方の投げっぱなしは余り好きではない。

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あふ