劇場公開日 2015年10月31日

「絶望の淵で拠り所とするは」裁かれるは善人のみ nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5絶望の淵で拠り所とするは

2018年9月21日
PCから投稿

ソリッドで静的かつ、動的な大自然。荒涼だが美しい風景に見いだされるのは、絶対的で圧倒的な力には到底無力だということである。

本作では、権力・宗教・不運などの覆すことのできない不条理がLEVIATHANとして描かれる。一方で、LEVIATHANを想起する鯨の死骸が浜辺に転がっている。これは絶対的な力の腐敗を意味しているのか。

絶望の淵に立たされたとき、あるいは人間の理解を超えた何かに合間見えたとき、拠り所とするのは神だ。理性の世の中が200年以上続き、一般市民の間にも事実のみを信じる志向はかなり浸透してきているのだろう。しかし、ある意味人間の最後の砦である信仰それ自体が腐敗したものだったとしたら、、、絶望の闇の中で我々は一体何を頼りに歩んで行けば良いのだろうか?何を目的に生きれば良いのだろうか?そもそも私は何の為に生きているのか?

腐敗した宗教が「本当の価値が嘘に取って代わられている」と語ったのは、腐敗した権力者たちであったことは、皮肉以外の何者でもない。

絶望の岸壁に立たされたとき、目の前にするのは、誰の力も及ばぬ大自然。それは人間の手に負えるものではない、全てを飲み込み、全てを破壊する、静的だが暴力的なものだ。神をも思わせる圧倒的な力をもち、息をのむほど美しいこの自然は、リリアのように身を捧げてしまいたくなるほどだ。

nagi