劇場公開日 2015年6月6日

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「良質な映画でした」アイズ いなりんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5良質な映画でした

2015年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

前半では、主人公の父も母も弟もセリフ回しがどこか変(エキセントリックすぎ、棒読みなど)で、主人公だけが、普通にしゃべる。違和感・・。時に、この脚本のセリフ自体が日常的な感じがしないことに不満も生まれ、役者の演技レベルが低いんじゃないか・・という思いが心のどこかをよぎる。

そうしたもやもやはあるものの、画面に退屈なところはなく、確実にどこかに連れていかれている感じがしてくる。

そして、終演近くこの家族の「実は・・」が、ただならない表現力の映像で語られる。私も泣いた。

この映画は、知的に構成された映像人たちのたくらみといってよく、その出来・成否は、出演者のみなさんがこの難しい心理状況をどう表現するかにかかっているともいえる。そう考えたとき、前半の妙な違和感は納得できる表現として受け入れられるように思われるし、主人公のクライマックスでの観客に訴える演技力も文句がない。福田監督率いる福田組の達成感が伝わってくるような気がする。

クライマックスの後、さらに謎解きの説明がなされるが、ここは少しわかりにくいように思った。・・ので、もう一度観て確認したい。

エンドロールが流れ、最後に劇場の明かりが点くまで観劇者の誰も席から立たなかった。こういう共有感覚も久しぶりに味わった。良質な映画を見たなあと今も思い返している。

いなりん