劇場公開日 2015年8月8日

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「【国家存亡時、身命を賭して日本を救おうとした様々な男達及び彼らを支えた女性たちの姿を鮮烈に描き出した、見応え充分の近代歴史大作。当時起こった事を”風化させない”意義ある作品でもある。】」日本のいちばん長い日 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【国家存亡時、身命を賭して日本を救おうとした様々な男達及び彼らを支えた女性たちの姿を鮮烈に描き出した、見応え充分の近代歴史大作。当時起こった事を”風化させない”意義ある作品でもある。】

2020年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

 この作品の鑑賞後、世間の一般的な評価は、”岡本喜八監督の67年版と比較され、余り芳しくなかった”記憶がある。
 だが、私はこの作品をとても興味深く、そして時に涙を滲ませながら鑑賞した。
 作品内容に関しては、多くの方が詳細に語られているので、私が今でも記憶に残っている部分を記す。

■阿南陸軍大臣(役所広司:役所さんは、67年版では阿南大臣を三船敏郎さんが演じていたプレッシャーが凄かったと、当時の資料で述べておられる。)
 私のそれまでの印象を大きく覆された人物である。(岡本喜八監督の67年版の影響)
 大変な子煩悩で、家庭を大切にする姿が描かれている。妻綾子(神野三鈴)に対しても、優しい言葉を掛ける。いつも、柔和な表情を浮かべている。
 人望が厚かったことが、言動を見ていると良く分かる。
 そして、あの自決シーン。
 達観した表情で遺書をしたため、前のめりに息絶えるところでは、その前の彼の姿を観てきただけに、”陸軍大佐として、多くの部下を死なせてしまった”想いが感じられ、かなりグッときてしまったシーンである。
 そもそも、彼が陸軍大佐になったのは1945年4月、同士でもある鈴木貫太郎首相から請われてである。彼の役目は”本土決戦”を唱える陸軍の暴走を食い止めるものであったのだ。
(彼は陸軍急進派には”クーデターを支持する”風に見せたりしてもいる。)
 だが立場上、最終的には”自分も自決する覚悟”で大命を引き受けている。
 漢である。

■鈴木貫太郎総理大臣(山崎努)
 二・二六事件で、九死に一生を得、阿南と同じく1945年4月、固辞するも、昭和天皇の強い希望で、第42代内閣総理大臣に就任。
 あのような政治状況で首相を引き受ける事が、如何に覚悟がいったかを山崎努が飄飄とした演技で器の大きさを感じる人物を体現している。
 暴走している陸軍からの攻撃、及び終戦後も戦犯として処刑される可能性も大きかった筈であるのだから。

■昭和天皇(本木雅弘)
 67年版では八代目松本幸四郎が演じたが、引きの画や後ろ姿でしか写されなかった。だが、今作ではしっかりと”憂いを帯びた”表情が映し出されている。
 それにしても、今でも脳裏に残っているが、本木雅弘演じる昭和天皇の表情、そして抑揚のない平板な声は”凄かった”。
 そして、天皇の身を心配する阿南陸軍大臣に対し、”もうよい、私には国体護持の確証がある。”という言葉の重み。
 さらに”わたくしは国民の生命を助けたいと思う”と語り、玉音放送の録音に向かう姿。

ー今作は、この3人が自らに与えられた使命を全うしようと懸命に努力する姿を高所、大所から描いている。-

■畑中陸軍少佐(松坂桃李)
 宮城事件を画策するも、阻止され椎崎中佐とともに、自決。

 彼ら、若手陸軍急進派も彼らなりの大義を持ってあのような行動に出てしまったことが良く分かる。(擁護する気はないが。)
 只、宮城事件失敗後、畑中と椎崎が芝生の上で正座し、皇居を仰ぎみて腰のピストルをこめかみに向け自決するシーンは、哀しかった。

<近代の国家存亡の危機に直面した日本を夫々の立場、思想で与えられた役割を全うしようとする姿を”登場人物40名を優に超える”陣容で描き出した近代歴史大作。当時起こった事を”風化させない”意義ある作品でもあるとともに、現在の政治家の方々に観ていただきたいと切に願う作品でもある。>

<2015年8月8日 劇場の大スクリーンで鑑賞>

NOBU
talismanさんのコメント
2021年8月15日

ちなみに「東京裁判」で玉音放送全文を初めて文字と音声で見て聞きました。とても長いことと文字で読んでも要するに!が明確に伝わってこなくてショックでした。当時、音が明瞭でなかったかも知れないラジオで一度聞いて何を言わんとしているのかすぐにわかった人は一体どれだけ居たんだろうと思いました。

玉音放送聞きながら打ちひしがれて泣いている人々の映像をテレビなどでよく目にする訳ですが、あれは本当なんだろうか?内容より天皇がラジオで話す、だけでショックを受けたんでしょうか?など色々また考え始めました。

talisman
talismanさんのコメント
2021年8月15日

岡本喜八監督のも見なくてはと今日見たんですが途中で見るのをやめました。役所広司の阿南が頭の片隅にあって三船敏郎の阿南に違和感を覚えてしまったからです。また最後の御前会議で大臣その他ほぼ全員が泣くところにも違和感がありました。事実なのかもしれませんが、部下には強い物言いをしているのが天皇の前だとそうなるってなんなんだろう、などと思いました。役所広司のversionではどうだったかな?確認してみます、今度。

talisman
talismanさんのコメント
2020年8月16日

NOBUさん、おはようございます。この映画見たのはかなり前で記憶が薄れていたので、NOBUさんのレビューで鮮明に思い出せました。役所、山崎、本木の3人がこの映画の格を上げていました。

talisman