劇場公開日 2015年8月8日

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「実に醜悪」彼は秘密の女ともだち よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

0.5実に醜悪

2015年9月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

妻を失った男が女装癖を甦らせる。そして亡き妻の親友である女性との間に友情とも愛情ともつかぬ感情を抱く。
ロマン・デュリスの女装した姿が醜悪だと言いたいのではない。
かと言って美しいとも思わないが。
ゲイ、女装する男、女装癖を持つ男があこがれる女性のスタイル。これらのセクシャリティの描き方があまりにもステレオタイプなのだ。観ていて息が詰まりそうなほどに。ゲイが夜の道端に立って客を誘うシーン、バーで寄り添うカップルへの視線など、ゲイのアプローチってこんなもんだろうと言わんばかりの描写が続く。
フランソワ・オゾン自身が同性愛者であると公言しているくらいだから、そこにゲイへの蔑視があるとは思いたくない。しかし、これはどうやら、ゲイであることと、セクシャリティの多様性に自覚的なこととは別のことらしいことが伺える。
この映画は、セックスとは男と女である。男とは。女らしさとは。云々というセックス観の固定化と同様に、ゲイとはこうである。ゲイらしさとは。というゲイに関しての固定観念を増幅させているに過ぎない。
だから、女装癖を持ちながらも同性愛者であることを否定する主人公に幸せをつかませることが出来ないはずなのだ。事故で意識不明となり、そこから回復した主人公のとってつけたようなエピローグは、この物語が結局彼の幸福を認めていないことを示唆している。本来は植物状態のままで主人公の人生は終わっているのだろう。

現在、日本で公開されるフランス映画は減っている。その中で、毎年確実に公開されるフランスの映画作家はフランソワ・オゾンただ一人と言ってもよい事態が辛い。

佐分 利信