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3.5ていねいに描いた家族の恢復

2020年7月11日
PCから投稿

長男に死なれた家族──父と母と弟──三人がその葬儀を終え、車上で長回しになるのがタイトルロールでした。ずっと父──ピアーズブロスナンの表情を追うのですが、一寸たりと違和感がなく、完全に息子に死なれた父親でした。演技云々するのもナンセンスなほどのキャリアと実力の人ですが、改めてほんとに巧い人だと思いました。

この映画のことを妙によく憶えています。
ブロスナンもさることながらキャリーマリガン、スーザンサランドンと演技派が揃っていました。マイケルシャノンもいました。監督は女性で、傑物感はありませんが、デビュー作なのもあってか、端々まで丁寧な印象でした。
加えて普遍のストーリーがありました。──亡くなった息子の彼女は、彼の子を身籠っていたという機縁から、打ちひしがれ傷ついた家族が、新しい生命に癒えるという話です。それを、てらいなく、凝りなく、媚びもなく捉えて、美しいシンデレラ曲線を描き出していました。顧みるに、この映画のことを妙によく憶えているのは、至当なことです。

とりわけキャリーマリガンは、ヒッピーな感じもある「一風変わった子」の設定で、ベリーショートと大きなえくぼが素敵でした。女優としての評価を確立した17歳の肖像と同年の映画でもあり、若き日の瑞々しさが収まっていると思います。

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津次郎